第五章 佐奈恵
青色のはちまき……。小学生のころは、青団なんて一度もなったことなかったんだよなぁ。あ、中学校では青龍団って言うんだっけ。
そんなことを考えながら、私ははちまきをしっかり結び、体育館へ向かった。新校舎のこの学校は体育館へ続く廊下が明るい。お兄ちゃんのときは、窓がなくって暗かったけど、きっちり窓も左側についている。
「でもほんとよかったね」
美鈴も同じ青色のはちまきの頭に巻いた。
「うん、ほんと。一緒の団じゃなかったら、さみしいもんね」
互いに微笑み合いながら、体育館に入った。と、目の前の景色が上へばっと流れ、気付いた時には頭を床にぶつけていた。
「大丈夫?」
顔を上げると美鈴が心配そうに眉を下げながら言った。幸い、周りに人は少なかったので、目立たずに済んだ。
「大丈夫」
笑いながら起き上がろうとすると、すっと目の前に手を差し出された。美鈴かと思い、笑いながらありがとう、と言い、差し出された手を握り立ち上がった。顔を上げてびっくりした。
「僕の足でこけさせてしまったみたいだ。すまない。許してくれ」
既に美鈴は体育館の奥の方にいて、少しぶっきらぼうに謝ってきたのは、メガネの少年だった。
「あ、ぁ……大丈夫です! あやまらないでください!」
なぜか敬語になってしまう。
こんなに顔が近かったら、顔に何かついてたら……!
顔を真っ赤にしながら、気付かれないよう少し後ずさりしたが、すっとまた顔を近づけてきた。
「君はもしかして、この前の……」
彼の言葉も耳に入らず、私はぼーっと彼の顔を見ていた。こんなに見たら失礼かも、と思いながらも、じっと見入ってしまっていた。
すっと通った鼻、二重のきりっとした目と眉、なめらかな肌……。
そう、そこまで見えてしまう距離だったのだ。
そんな時間はあっという間で、また他の子たちが体育館に入ってきたので、私は「すみませんでした!」となぜか謝りながら、慌てて親友のもとへ行った。
「もう、何してたのー。顔が赤いよ? あ、もしかして、好きな人とラブハプニング?」
美礼が茶化してきたが、まったく耳に入らず、そうなんだね、と笑いながら肩をぽんぽんとされた。
彼も青色のはちまきをつけていたような気がする……。そう考えただけで頬が熱くなって、鼓動が早くなる。なんだか彼がなつかしく感じるのはなぜだろう?
ありがとうございます!
第六話もいかがでしょう?