第三章 佐奈恵
「もうすっかり秋、って感じだよねー」
教室で窓の外を眺めていた私に、親友の美鈴が、冗談めかしてため息をついてみせた。
「もう緑の葉もすっかり落ちて……」
二人で吹きだした。
「まだそこまで秋じゃないじゃん!」
そう言いながら笑っていると、先生が教室に入ってきたので急いで席に着いた。今日はなんとか一番のバスに乗ることができたので、美鈴とふざけ合う時間があった。この前の二番のバスに乗っちゃったときなんて、あと残り十分だったから、ふざけ合う時間なんてなかった。
その時、ふとあのメガネの少年のことを思いだした。彼は同じ学校だったみたいけれど、何年何組なんだろう?
「福山 佐奈恵」
不意に名前を呼ばれて慌てて答える。
「はい、なんでしょうかっ?」
そんな私の言葉に、クラスがどっと沸いた。
「健康観察だよ。福山、ちゃんと起きてるか?」
隣の磯部くんがからかう。
「元気です……」
顔を真っ赤にしながら、磯部くんに向かって舌を出してみせた。一番前の先生の目の前の席なので、おいおいちゃんとしろよ、と先生にまで言われてしまう。まったく、もう……。
朝学活が終わり、一年二組の女子は、一時間目の一学年運動会練習のため、体操服に着替えるため、多目的室へ向かった。
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