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Trick and treat  作者: T.S キャロル
16/22

第十六章 隆平

 あいつら、今頃どうなってるかな。まさか、まだ迷子なんてことないよな。そろそろ佐奈恵にの家にでも電話してみるか。

 受話器を手に取り、佐奈恵の家の電話番号をプッシュした。

「もしもし、福山です」

 聞き慣れた声が、電話の奥から聞こえた。

「おぅ、佐奈恵か。長野だ。今はもう家なんだよな?」

「当たり前じゃないですか! そうじゃなきゃ電話に出ませんって」

 安心した。

「で、どうだった?」

「何がですか?」

「森沢と楽しんだんだろ?」

「ちょっ……長野さんたちに置いてきぼりにされて、ほんと怖かったんですからねっ! 運よく森沢さんに助けてもらえましたけれど」

 それならいい……。

「そうか。で、森沢も家に帰ったんだな?」

「はい。あの、ところで森沢さん……」

「ん?」

 突然佐奈恵が声のトーンを下げたので、どうしたのか、と構えた。

「森沢さんと私って、昔会ったことありません?」

「はあ?」

「いや、なんだかすごくなつかしい感じがするんですよ」

 佐奈恵と俺は、幼いころから一緒だった。でも、森沢となんて一度も会ったことがない。それとも、別の場所で……? いや、これはあれだな。

 やっとわかって、にやっとした。

「まぁ、それはいずれわかることだろうよ。気にするな。じゃあな」

 そう言って、受話器を置いた。

 えっ、ちょっ、待ってくださいよ! とか聞こえたが、まあいずれわかることだ。俺の考えが合っていれば……。

「もしもし、森沢だが」

「おぅ、今家か?」

「あぁ、当たり前だ。これは家の電話だからな。君だって知ってるだろ? 僕が携帯を持っていないことくらい」 

 俺だって持ってねぇよ。

 苦笑しながら、続けた。

「お前、佐奈恵とどうだった?」

「なっ……」

 佐奈恵と似たような反応。電話の向こう側で顔を真っ赤にしている森沢を思い浮かべて、にやにや笑いが止まらなくなる。

「で、どうだったんだよ」

「どうだった、と言われても……まあ楽しかったが? それがどうした」

「いや、別に」

 早速本題に入ろうとしたその時だった。

「僕と彼女は、もしかして昔どこかで会ったのではないか、と思うのだが、どうだ? 何かこう、なつかしい気がする」

 向こうから切り出してくれるとは。

「おう、それを聞きたくて、電話したんだよ。佐奈恵もそう言っていたんだ」

「福山さんも?」

「あぁ」

 予感的中、ってとこかな。あいつらきっと、運命の糸で結ばれた関係だな。運命の相手に会うと、どこかなつかしさを感じる、と

よく言われている。うちの母さんと父さんもそうだったしな。

「で、どう思う?」

「うーん、まぁそれは、いずれわかることさ」

「おい、はっきりしろ」

「自分で答えを導き出した方が、お前としてもおもしろいだろ? じゃあ俺は切るぜ。またな」

 そう言い、受話器を置いた。

 いっそうおもしろくなってきた。さて後は、あいつらがそれに気づくのにどれくらいかかるかと、素直にそれを受け入れられるか、だな。恋の主役になるのもおもしろいが、キューピット、ってのもなかなかイケるぜ。


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