第一章 福山 佐奈恵
とうとう長い夏休みも終わり、みんなしぶしぶカバンを持って、学校へ向かう。東野中学校にはバス通学の生徒も多く、私もその中の一人だった。
「佐奈恵、もう三十五分だよ。バス、四十分じゃなかった?」
一階からお母さんが呼んだ。
はーい、と返事をしながら時計を確認する。もう七時三十七分を指している。慌ててカバンを肩にかけ、鏡で服装をささっと整えて階段を駆け下りた。
「行ってきまーす!」
走って家を出た。バス停はすぐそこだけれど、たまにずっこけたり犬の糞を踏んじゃって遅れることがあるので、毎回早めに出ている。
「きゃあ!」
まただ。住宅が並ぶ道路の端に、犬の糞が落ちていて、それを踏んでしまい、さらに運の悪いことに、それは新品の靴だった。真っ白い靴の裏に、それがなんともいえないような感じについている。この辛さがバスの運転手さんにわかるまい……。
もうどうせ一番のバスには遅れるんだし、二番目のバスに乗ろう。私は左足を引きずり、ひどい悪態をつきながら自分の家の庭へ戻り、水道の蛇口をひねった。
「あんたまだいたの。もうバス行っちゃうじゃん」
「もう行ってる」
お母さんが玄関から出てきて、自転車にまたがった。
「それじゃ、先仕事行くから、二番目のバス五十五分だからね。行ってきます」
「行ってらっしゃい……」
お父さんは既に車で仕事に行ってるし、お兄ちゃんも高校にとっくに着いてる。あとは私だけかぁ。
ふぅっとため息をつき、蛇口をひねり、水をとめた。
「でも晴れててよかった」
そうつぶやき、今度こそ犬の糞などつかないように、バス停へむかった。
バスはちょうどバス停に到着するところで、バスのドアが開き、カードを出してバスに乗った。
少し車内を眺め、空いている席を探した。やっと見つかったのは、くしゃっとした髪の、メガネをかけた、非常に姿勢の良い少年の隣だった。
「隣、いいですか?」
控え気味に聞いてみる。
少し年上か同い年の彼は、同じ学校の制服を着ている。彼は英語で書かれた本を読んでいたが、私の方を少し見ると目を少し大きく見開き、どうぞ、と本に視線を戻しながら言った。もう声変わりは済んだのだろうか、とても落ち着いた、低い声だった。
「ありがとうございます」
丁寧にお礼を言い、ゆっくりと座った。
なぜさっき、驚いたように目を見開いたのか、たずねたいところだけれど、本に没頭しているようだから、そっとしておいた。
まだ中学一年生の文才ないやつ(私です!)が書いてる小説なので、ひっじょーにつまらない、ばかげた作品かもしれませんが、今後とも、よろしくお願いいたします!!!