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配信者や歌い手の『歌ってみた』や『歌枠配信』って著作権はどうなっているの? というお話  作者: 九傷


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配信者や歌い手の『歌ってみた』や『歌枠配信』って著作権はどうなっているの? というお話(前)

 


 皆様は『歌ってみた』や『歌枠配信』という言葉をご存知でしょうか。

 昨今は動画投稿も配信も広く世の中に浸透しているのでご存じの方も多いでしょうが、一応簡単に説明いたします。


 まず『歌ってみた』についてですが、読んで字のごとく歌謡曲やボーカロイド曲などを歌ってみて、その録音を動画として投稿する文化になります。

 元々は2000年代前半に掲示板やニコニコ動画などに素人が歌った動画を投稿するのが一般的でしたが、ボーカロイドの大流行などでブームに火が付き、今となっては人気のジャンルになっています。

 当時はわざわざ素人の歌唱力、素人の技術で録音された曲を聴くことに否定的な意見も多かったですが、その歌い手たちがプロデビューしたり、逆にプロが『歌ってみた』を投稿したりと、技術面やクオリティでも進化が(いちじる)しい文化です。


 次に『歌枠配信』についてですが、これはライブ配信中に歌うのをメインとした配信になります。

 枠という言葉に違和感を覚える人もいるかと思いますが、これは以前主流だった配信環境であるニコニコ生放送で生まれた言葉です。

 ニコニコ生放送ではライブ配信(生放送)する際に『放送枠』を取得する必要があるため、放送=枠のようなイメージで使われるようになりました。

 つまり、『歌配信』や『カラオケ配信』と言い換えてもほぼ同じ意味と思って問題ありません。


 今回はその『歌ってみた』や『歌枠配信』における著作権関係のお話をしていきたいと思います。

 あ、と言っても著作権自体の詳しい内容について触れるというよりは、やっていいこと悪いことや注意点などについて簡単に解説するという趣旨になります。



 さて、ここまで読んでくれている方であれば、ある程度『歌ってみた』や『歌枠配信』を視聴した経験があったり、興味があったりするのではないでしょうか。

 その前提で進めていきますが、そんな皆様の中には「これって著作権的に大丈夫なのかな?」と疑問に思った人もいるのではないかと思います。


 疑問に思わなかったらそれはそれでマズイかもしれませんので一応書いておきますが、『歌ってみた』や『歌枠配信』は基本的にオリジナルが存在する曲のカバーやカラオケになりますので、当然著作権により保護されています。

 この著作権は申請など特に必要なく創作した時点で自動的に発生するため、プロじゃない方が作曲した曲や商標登録されていない曲にも存在します。

 ですので、アマチュアの方の曲だから自由に歌っても大丈夫――とはならないのでご注意ください。


 この著作権ですが、一口に言ってしまうと一つの権利のように思ってしまいますが、実際は演奏権や複製権などといった複数の権利を含んだ結構複雑な内容だったりします。

 本題から外れるので詳細には触れませんが、しっかりと理解しているのはそれこそ弁護士などの法律家くらいのものでしょう。

 権利を持っている著作者自身ですら、知らずにトラブルを発生させたりもししていますからね……



 そんな難しい内容なので既に忌避感とか面倒くささを感じている人もいるかもしれませんが、『歌ってみた』や『歌枠配信』で楽曲を利用する場合に注意すべきことは基本的に二点のみになります。

 一つは「著作者(著作権管理団体)に楽曲自体の利用許諾が取れているか」、そしてもう一つは「音源の製作者の利用許諾が取れているか」です。



 前編ではまず一つ目について解説しますが、これは主に著作権管理団体であるJASRAC(日本音楽著作権協会)やNexToneで管理されている曲かどうかが重要なポイントになります。

 本来著作物の利用許諾はその著作物の権利者(複数人存在する場合がほとんど)に取るものですが、下手をすれば数百件数千件以上の許諾申請を一つ一つ確認し承認するのは非常に大変ですし、不正利用を取り締まるのも個人ではかなり難しいです。

 そういった個人での著作権管理の難しさから、著作者の代行として管理を委託されているのが著作権管理団体になります。


 恐らく多くの方が勘違いしていると思いますが、実はこういった著作権管理団体はほとんどの場合非営利組織です。

 音楽のレーベルや事務所のように報酬の何割かを得るようなことはしておらず、徴収した報酬は権利者に対し公平に分配を行っています。

 以前は金銭徴収のトラブルなども多かったので「がめつい」などの悪いイメージを持っている人も少なくありませんが、著作権管理団体に管理を委託すれば煩雑な管理作業が激減するうえに報酬の一部を取られたりもしないので、実は権利者側からすれば物凄く便利でありがたい組織だったりするのです。

 また、著作物の利用者側についても複数いるであろう権利者に直接交渉する必要がなくなり、窓口が著作権管理団体に一本化されるため利用許諾が取りやすくなっています。


 ただ実際は、個人が直接権利者に利用許諾を取ること自体、そう簡単にできることではありません。

 一般の方はお断りだったり、そもそもコンタクトをとる手段がない、あるいは恐れ多くてお願いできないなど理由は様々ですが、基本的には難しいと思った方がいいです。

 稀に作曲者やバンド関係者が直接許諾してくれるケースもありますが、実は権利者は所属レーベルだったり、著作権は持っていても一部だけだったりすることもあるので、場合によっては大問題になることもあります(小室哲哉さんの事件など)。

 例外はボーカロイド曲(現在レーベルに所属している方の曲はNGなこともあります)などの、『完全に一人で制作している曲』くらいのものと思っていいでしょう。



 だからこそ著作権管理団体で管理されている曲であることが、『歌ってみた』や『歌枠配信』にとって重要なポイントとなるわけです。

 著作権管理団体への利用許諾であれば実は個人でも簡単かつお手頃な価格で取ることができますので、個人で契約している人も一定数います。

 非営利であればJASRACなら年間1万円程度ですので、興味がある方は調べてみてはいかがでしょうか。


 ただ、配信者や歌い手は全員個人契約を結んでいるのか? というと実際はそうでもありません。

 というのも、Youtubeやニコニコ動画などの一部配信サイトではJASRACやNexToneと包括契約(本来なら複数となる契約を一つにまとめて一括契約すること)を結んでいますので、そういった配信サイトで『歌枠配信』や『歌ってみた』を投稿する分には個人契約や使用料の支払いは必要ないからです。

 これは学生さんなど金銭面で不安がある人にとってはとても助かることだと思いますが、当然注意点もあります。


 まずは前提としてJASRACやNexToneが管理している曲である必要がありますし、管理曲であっても配信についてはNGになっていることもあります。

 これに気付かず配信で歌ってしまうというのはとてもありがちなミスなので、可能な限り歌う前に確認しておくのが安全です。

 個人であれば訴えられることはほとんどありませんが、有名になったりチャンネルの規模が大きくなれば認知されやすくなりますし、信用にも関わりますので意識していくべきだと思います。

 特に『歌枠リレー(歌枠を複数人のリレー形式で行うイベント)』などの自分以外の人が関わるイベントでは、「バレなきゃ(訴えられなきゃ)問題ない」といった考え方だと他の人に迷惑をかけかねません。

 他にも色々とありますが、人のためにも自分のためにもしっかりと考えるべきと思います。

 ※これ以上は愚痴のようになってしまうので控えます。


 また、一部のSNSではJASRACやNexToneと包括契約を結んでいないため、そういった環境で『歌ってみた』を投稿したり『歌枠配信』をするには個人で契約を結ぶ必要があります。

 代表的な例だとX(旧Twitter)になりますが、このエッセイを書いている現在(2026年6月)もJASRACやNexToneと包括契約を結んでいません。

 つい最近JASRACの公式アカウントから明言されたため「投稿や配信ができなくなってしまった」といった内容の投稿をしている方が一定数いましたが、歌の投稿や配信で歌うの(アカペラや弾き語りも含む)は昔からNGです。

 以前のX(旧Twitter)は収益がなかったので非営利と言えなくもありませんでしたが、今は直接的に収益につながるで訴えられても文句は言えません。


 多くの人がやっているから意識していなかった人も多いと思いますが、投稿や配信する環境の契約状況はしっかりと自分で確認した方がいいと思います。



 →後半に続く




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