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一限目 部屋のない教室

キンコ~ンカンコ~ン


「遅刻ギリギリ」

「アウトだ!」


ゴンッ!


上はスーツ、下がジャージという独特な格好をした、いかにも体育の教師のような男に殴られる。


「早く教室に行け!」

「…わかったよ

大場先生」


大場の横を通り抜けて、教室へと入って行った。


「アイツなんで進級出来たんだ…」


大場は、一人で呟いた。


「クシゅン……

にしてもオレ、よく進級出来たな…」


自分で言ってれば世話ない……



教室の近くまで来ると、一つだけ異様に静かな教室があった。


「よかった…

あいつらとは違うクラスか…」


ホッとしながら、教室に入ろうとすると


「ちょっと待て」

「なんすか?大場先生ってか足早いっすね…」

「お前そこの教室じゃないだろ」


大場の一言に多少の沈黙が流れる。


「オレ、去年1組でしたよ」

「それは中等部までだろう

今年から7組だろう」

「……ウチの学年6クラス編成ですよね?」

「今年から7クラスだ」


手を叩いて、納得する生徒。

しかし、教室を端から順に見ていくが6組までしかなかった。


「先生…7組がないんですが…」

「7組は別棟だろう」

「別棟なんてないじゃないですか」

「あるだろうアレだ」




大場が指をさした方向を見ると、体育館があった。


「体育館ですか?」

「まさか…その奥だ」

「………わかりました、オオバカ先生」


ゴンッ!


「早く行け!」

「……わかりました」


頭の大きなコブをさすりながら、歩いて行った。


体育館の裏側に行くと、机と椅子が並べられていた。


「外にあんのかよ…」

「おう!雄一遅かったな」


雄一とは、中1年の時から仲が良かった啓之が手を振っていた。

周りを見ると、どことなく見たことある顔が集まっていた。


「雄一もいるねぇ」

「オ~佐山!ってことは…もしかして…啓之もいるな」

「今、手振ってたじゃねぇか!」



三人でワイワイ騒いでいると、また一人の生徒がやって来た。


「よ~何してんねん?」

「関西!」

「お前もかよ」

「しゃ~ないやんけ

オオバカに言われたんやから」


関西と呼ばれた生徒は、口は悪いが女子である。


そして、三人が教室にやって来た。


「一樹!二美!」


「どっちがどっかわからないけどな…」

「ズボンを履いてるのが……どっち?」

「一樹ですよ」


机に鞄を投げて席につく。


「………」

「二美は相変わらず無口か…」


雄一は、ボソッと呟いて鞄からヘッドフォンを取り出した。


一樹、二美は一卵性の双子で、そっくりな顔つきのせいで一樹は、たまに間違われ女子トイレに連れて行かれかけた経験がある。


「よ~し、みんな座れ!

今日から担任になる、大場だ ヨロシク」


クラス全員がため息をつく。

大場は、「今から、無事高等部に進学できた、お前らに高等部での規則等を説明して行くぞ」と言って、自前のチョークを持って振り返ると


「黒板がない!」



大場の声は、奥の方にある校舎に当たって跳ね返って来た。


「先生!」


一樹が手上げ、大場を振り向かせる。



「なんだ?」

「こんなんでクラスが成り立つんですか?」


一樹の質問に対して、大場は笑いながら答える。


「クラスというのは、生徒と教師、教室があれば成り立つ

……成り立ってない!」


クラス全員がまたため息をつく。


「こんなんで大丈夫かねぇ?」

「行けるんちゃうん?」

「無理じゃねぇか?」


流石の啓之も呆れていた。

その横で、雄一は机に足を乗せ、音楽を聞いていた。


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