✒ 涙真珠と鱗 2
──*──*──*── 5日後
樽に入った涙真珠を人魚族の長に返した後、「 御礼をしたい 」って事で4泊する事になった。
滞在中は飲めや歌えやのおもてなしをされた。
人魚族の長は、7つの領海を治めている統治者の実子の直系の子孫らしい。
セロの言った通り、この海底遺跡に住み着いてから3万年は経過しているみたいだ。
人魚族は長命種で50年に1歳ずつ年を取るらしい。
人間が100歳を迎えると人魚族は2歳になる。
人間と時間の流れが違う事に驚いた。
5日目には人魚族が暮らしている海底遺跡を出発した。
次は鱗を返す為に、別の魚族の元へ向かう。
マオ
「 ──草食系の人魚族って、穏やかな性格をしてたよな。
歌や踊りが好きなんて楽しくて賑やかだったしさ。
無事に涙真珠を返せたし、泣く程喜んでもらえるなんて思わなかったよ 」
セロフィート
「 同胞の形見ですし。
海賊船の中に人魚族は居ませんでしたから、売られたやも知れません。
仮に亡くなっても人魚族の死体は高額で売買されますし 」
マオ
「 そうなんだ……。
人間って人魚が好きなんだな? 」
セロフィート
「 肝を食べれば “ 800年は生きられる ” というデマを真に受けて信じるくらいですし。
人魚の肉を食べても不老不死にはなれませんし。
寧ろ、人魚の肉は人間にとって毒にしかなりません 」
マオ
「 そうなのか?
人魚に関する彼是って全部、嘘っぱちだったのかよ?
浪漫が消えたぁ~~ 」
セロフィート
「 何が浪漫ですか。
人魚族にしてみれば迷惑極まりない迷信です 」
マオ
「 人魚族も乱獲の被害に遭ってるんだ? 」
セロフィート
「 乱獲程ではないです。
海上に上がる人魚族はほぼほぼ草食系の人魚族ですし 」
マオ
「 そっか……。
人間に襲われない人魚族は雑食系の人魚族だけか── 」
セロフィート
「 残念ですけど、雑食系の人魚族も人間に襲われますし、捕まります。
人魚族に御執心な貴族も居ますし。
素材採取する為に冒険者に狙われる事も有ります 」
マオ
「 冒険者かぁ~~。
そう言えば最近、冒険者してないよな。
セロ、鱗を返し終わったら、久し振りに冒険者しないか 」
セロフィート
「 マオに付き合いましょう 」
マオ
「 決まりだな!
人魚族を狙う依頼を出してる貴族が居たら消してやろうな! 」
セロフィート
「 ふふふ…(////)
それは良い案です。
その貴族達は人魚族へ贈りましょう。
喜んでくれるでしょう 」
マオ
「 ははは…… 」
そんなこんなで樽に入った鱗を返す為、シャボン玉は肉食系の人魚族の元へ向かって進む。
泳いでいるのは不気味な深海魚ばかりだ。
マオ
「 深海魚が泳いでるって事は、かなり深い場所へ進んでる──って事なのか? 」
セロフィート
「 鱗を返す人魚族は特殊な場所で暮らしてます 」
マオ
「 特殊な場所って? 」
セロフィート
「 海底火山の近くです 」
マオ
「 か…海底火山!?
それって危なくてヤバい場所なんじゃ…… 」
セロフィート
「 ふふふ…。
この海域の海底火山は300年は噴火しません。
安心してください 」
マオ
「 300年は無事なんだ?
良かったぁ~~ 」
セロフィート
「 そろそろ着きます 」
マオ
「 その人魚族の長も管理者の子供の子孫なのかな? 」
セロフィート
「 そうです 」
シャボン玉が赤く光る場所に向かって下りて行く。
下には海底遺跡が見える。
草食系の人魚族が住み着いていた海底遺跡よりも古そうだ。
この遺跡もセロの先代さんが沈めた≪ 国 ≫なのかな……。
マオ
「 こんなに深い場所にも海底遺跡が眠ってるなんて、凄ぉ~~。
これも先代さんの仕業なのか? 」
セロフィート
「 この海底遺跡はワタシから11代前の先代です 」
マオ
「 11代って事は……11万年前って事だよな? 」
セロフィート
「 そうです。
この≪ 国 ≫が繁栄していた頃は、車が宙を浮きスイスイと走っていました。
魔法が使えない≪ 国 ≫でしたから、魔法の変わりに磁石の反発力と電力を活用していました 」
マオ
「 車って自動車だよな?
あれが磁石の反発し合う力を使って浮いてたのか? 」
セロフィート
「 車の形は違いますよ。
タイヤも有りませんし。
同様に魔法が存在しない≪ 日本国 ≫ですけど、再現は出来ませんね 」
マオ
「 そうなのか?
道を浮いてスイスイ走る車を直に見たかったな……。
でもさ、何で先代さんは其処まで豊かで凄い≪ 国 ≫を海に沈めたんだ? 」
セロフィート
「 有りもしない濡れ衣を着せられ、投獄されたので、逃げる為に≪ 国 ≫を沈めた様です。
他にも576つの≪ 国 ≫を滅ぼしてます。
随分とやんちゃな人形だったみたいです 」
マオ
「 1万年の間に576つの≪ 国 ≫を潰しといて、“ やんちゃ ” で済まないだろ……。
それって多いのか? 」
セロフィート
「 少ない方です。
1万年間で8994つの文明を滅ぼした先代も居ましたし 」
マオ
「 8千…………強者ぉ~~。
それでも人類は絶滅してないんだ…… 」
セロフィート
「 10分の1だけ残していれば良いですし 」
マオ
「 ……………………〈 皇 〉と敵対関係になっちゃうのも仕方無いのかな…… 」
セロフィート
「 良好ではかったですね。
≪ 大陸 ≫の場合は〈 皇 〉の不在時を狙い、やらかしてましたし。
短期出張から帰って来た〈 皇 〉は、さぞショックを受けた事でしょう。
〈 皇 〉が長期出張に出た後の≪ 大陸 ≫になると、〈 神の遣い 〉は≪ 神界 ≫へ戻ってしまいます。
何の気兼ねも無く、好き放題に遊べます 」
マオ
「 〈 皇 〉が長期出張から戻って来る迄は、人形のやらかしターンって事かよぉ~~ 」
セロフィート
「 そうなります 」
マオ
「 酷い…… 」
セロフィート
「 遊び心と悪気も多少は有りますけど、人形も〈 久遠実成 〉より与えられた役目を果たしているに過ぎません。
割り切り、受け入れるのが1番です。
天災と仲良く付き合いながら生活してこその人生です 」
マオ
「 大義名分が過ぎる……。
“ 天災 ” って便利な言葉だよな 」
セロフィート
「 貧しくとも図太く,しぶとく,逞しく生きれるのが人間の長所です。
元気で健康な身体が有れば、何時でも、どんな事にも挑戦は出来ます。
病気で床に臥せる身体ではまともに働く事も出来ません。
元気な身体をもらえた事を両親と代々の御先祖へ感謝する気持ちを持てれば、謙虚になれますし、思い遣り,助け合いの気持ちも芽生えて来ます 」
マオ
「 良い感じに纏めようとするなよぉ~~ 」
セロフィート
「 マオ、着きますよ 」
マオ
「 いよいよか……。
何かドキドキするな~~~~ 」
シャボン玉が11万年前に海底へ沈められ、古い遺跡に変わり果てた海底遺跡の中へ入って行く。
光苔は無くて、海底遺跡は光っていない。
マオ
「 セロ…………この遺跡には光苔は無いのか? 」
セロフィート
「 此処迄深いと光苔も生えはしません 」
マオ
「 そうなんだ……。
古代魔法で明るく出来ないのか?
明かりが無いからさ、不気味が過ぎるよ…… 」
セロフィート
「 此処で暮らしている人魚族は明るさを好まない様です。
このまま進みましょう 」
マオ
「 お…おぅ…… 」
シャボン玉がボロボロになっている巨大な門の前に到着した。
左隣に立つセロがオレの歩幅に合わせて歩いてくれる。
シャボン玉の中に居るから歩いていても足音はしない。
海中で足音がする方がおかしいか──。




