⭕ 龍宮城 5
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 部屋
ベッドの中で目が覚める。
昨夜は部屋に入るなり早々に踵の高い女性用ヒールとドレスを脱ぎ捨てて、ベッドに潜り込んで寝た。
セロから「 お行儀が悪いです 」って言われたけど、聞こえないフリをして寝た。
……………………怒ってないよな??
内心ビクビクしながら、ベッドから足を出すと足裏で柔らかい “ 何か ” を踏んだ。
予想外の事に「 おわっ!? 」と思わず声が出る。
足元を見てみると、オレの足裏にプニプニした “ 何か ” が動いた!?
「 ひえっ! 」と声が出る。
マオ
「 何だよ、これぇ~~ 」
良く良く見てみると丸くてぷよぷよしている。
オレも良く知ってるスライムだ!!
マオ
「 でも何で此処にスライムが居るんだ?? 」
セロフィート
「 マオ、起きましたか。
御早う、マオ 」
マオ
「 セロ!
御早う……って、何でスライムが居るんだよ? 」
セロフィート
「 昨日、紹介すると言いましたけど。
もう忘れました? 」
マオ
「 紹介って………………まさか、猛毒スライムと強酸スライムの事か!? 」
セロフィート
「 思い出しましたね。
可愛いでしょう。
恥ずかしがり屋さんですけど、マオが好きみたいです 」
マオ
「 いや……おっかないスライムに好かれても困るよ…… 」
セロフィート
「 ふふふ……。
抱っこしてあげてください 」
マオ
「 抱っこって……。
猛毒と強酸を体内で生み出してるスライムだろぉ…… 」
セロフィート
「 大丈夫です。
猛毒も強酸も吐き出したりしません。
安心してください 」
マオ
「 ……………………肌が被れたりとかしないか? 」
セロフィート
「 しませんよ 」
セロの言葉を信じてベッドの下に居る猛毒スライムと強酸スライムを持ち上げて抱っこしてみる。
1体からは仄かに甘い香りがする。
甘い香りは苺かな?
もう1体のスライムはポカポカしていて温かい。
マオ
「 セロ、甘い香りがするし、ポカポカするけど何でだ? 」
セロフィート
「 喜んでいるからです。
甘い香りを出すのは猛毒スライム,ポカポカ温かいのは強酸スライムです 」
マオ
「 淡い紫色が猛毒スライムで、淡い苗色が強酸スライムだな。
他のスライムより一回り小さいよな?
何でだ 」
セロフィート
「 成長途中だからです。
成長すると軽自動車くらいになります 」
マオ
「 デカっ!
そんなに成長するんだ……。
こんなに小さくて可愛いのになぁ…… 」
オレの腕の中で猛毒スライムと強酸スライムは、ぷるぷると体を動かしている。
まるで体を擦り寄せているみたいだ。
セロフィート
「 マオ、猛毒と強酸の効果を見てみたくなりました? 」
マオ
「 ならないよ!
此処は海中だろ!
海中で猛毒とか強酸さと吐かせたら駄目だろが! 」
セロフィート
「 誰が海中で──と言いました?
地上に戻ってからに決まってます。
人魚族の数が減っても構わないなら、海中で吐かせますけど? 」
マオ
「 絶対に駄目だからな! 」
セロフィート
「 はいはい。
朝食を用意しました。
食べ終えたら、アリエム姫,マリエム姫に地上の話を聞かせなければいけません。
きっと楽しみにしてくれてます 」
マオ
「 そだな。
人魚姫みたいに王子様に恋しなきゃ良いけど…… 」
セロフィート
「 それは誰にも分かりません。
〈 久遠実成 〉のみが知る事です 」
マオ
「 そだな……。
なぁセロ、此処にもア◯スラみたいな悪い魔女が居たりするのかな? 」
セロフィート
「 マオ、ア◯スラさんを悪者呼ばわりしないでください。
彼女は優秀で有能な薬術師です。
物語の都合で残念な扱いをされましたけど 」
マオ
「 えぇ~~。
だって綺麗な声と交換で不完全な薬を渡したじゃないかよ!
悪意しかないだろ 」
セロフィート
「 あれは正当な対価交換です。
私欲に負け、思慮も検討もせず、相手の話を鵜呑みにし、内容も考えない警戒心の欠けた幼稚な主人公が全面的に悪いです。
自業自得しょうに 」
マオ
「 主人公をディスるなよ……。
夢見がちで世間知らずな姫様なんだし、大目に見てやれよ 」
セロフィート
「 マオがア◯スラさんを責める様な事を言うからです。
とは言え、魔女が居なくて物足りないと言うならば、魔女になれば良いだけです 」
マオ
「 えっ? 」
セロフィート
「 良い事を思い付きました♪
面白い事は待っていても起きません。
マオとワタシで起こしましょう♪ 」
マオ
「 何か…………嫌な予感しかしないなぁ~~ 」
取り敢えず、セロが用意してくれた衣服に着替えて、用意してくれた朝食を食べる。
食後のデザートと高級品の紅茶を飲んで一休みしたら、部屋を出る事にした。
──*──*──*── 廊下
部屋から出ると海亀さんが居て、双子姫の部屋へ案内される事になった。
ポセイレードさんが、双子姫の部屋で話をする事を許してくれるとは思わない。
もしかしたらお父さんには内緒なのかも知れない。
案内してくれる海亀がムシュカさんだったら、双子姫の教育係だしポセイレードさんにチクっ──報告されていたかも知れない。
──*──*──*── 部屋の前
海亀
「 此方がぁ~~アリエム様とぉ~~マリエム様のぉ~~御部屋になりますぅ~~ 」
セロフィート
「 案内してくださり、有り難う御座います 」
海亀
「 どぅ致しましてぇ~~ 」
海亀さんはススイ~~と泳ぎながら何処かへ行ってしまった。
あの様子だとチクる気は無さそうかな??
セロがドアをノックするとドアが開けられる。
手招きをされて、部屋の中に招かれた。
──*──*──*── 双子姫の部屋
双子姫の部屋に入ったオレの感想は、物騒な物が多いって事だった。
様々な武器が部屋の壁や天井に飾られているからだ。
姫様っぽさの欠片も見当たらない室内に対して、開いた口が塞がらない。
“ 女の子 ” の “ お ” の字も無い、武器倉庫みたいだ。
セロフィート
「 これは凄い武器の数ですね。
これは全て集めたのですか? 」
マリエム姫
「 そうよ★
沈没船から拝借したの♪ 」
アリエム姫
「 此処まで集めるのに苦労したんだから~~。
お父様から『 沈没船には近付くな! 』って厳しく言われてるから、お父様の留守の日を狙って集めたの 」
セロフィート
「 どの武器もかなり使い古されてますね。
実際に使用されてます? 」
マリエム姫
「 分かるの?
そうなのよ!
実際に使ってみなくちゃ、どんな武器か分からないもの 」
アリエム姫
「 でもね……此処って海中でしょ。
直ぐに痛んじゃうの……。
結構お気に入りだった武器があったんだけど、使えなくなっちゃって…… 」
セロフィート
「 それは残念ですね。
ならばワタシが飾られている武器も、使い物にならなくなった武器も新品に変えましょう 」
マオ
「 ちょっ、セロ!?
本気かよ? 」
セロフィート
「 勿論です。
見知らぬ仲のマオとワタシを部屋に招き入れてくれたのです。
アリエム姫とマリエム姫への御礼の気持ちです。
さて、どうされます?
新品にしますか?
今なら武器が痛まず長持ちする様にコーティングもしますけど? 」
マリエム姫
「 本当に出来るの?
そんな事が── 」
セロフィート
「 勿論です。
ワタシは様々な≪ 大陸 ≫を旅する吟遊大詩人です。
それくらい朝飯前です 」
アリエム姫
「 是非、お願いしたいわっ!! 」
セロフィート
「 はい♪
引き受けました 」
そう言う笑顔で答えたセロは、古代魔法を発動させた。
ものの一瞬で室内に飾られていた武器がピカピカで未使用の新品に変わった。
コーティング魔法も施されているのが分かる。
壊れて使えなくなってしまった武器も同様だ。
アリエム姫
「 嘘ぉ~~!!
こんな事が本当に起こるなんて!! 」
マリエム姫
「 これは奇蹟──なの??
一瞬で…………壊れた武器も使える状態に戻ってる!! 」
セロフィート
「 奇蹟ではなく、古代魔法です。
吟遊大詩人であるワタシにしか使えない特別な魔法です 」
マリエム姫
「 古代魔法……。
魔法って凄いのね!! 」
セロフィート
「 特別な魔法ですから、他の魔法では出来ません 」
アリエム姫
「 新品って、こんなにも綺麗だったのね。
はぁ…………なんて素敵なのぉ~~。
使いたいわぁ~~!! 」
セロフィート
「 喜んでもらえて、マオもワタシも嬉しいです♪
沈没船の在る場所は分かります?
この際、沈没船に眠っている武器も収集してしましません? 」
マオ
「 ちょっ、セロぉ!? 」
セロフィート
「 良いではないですか。
折角の機会です。
ワタシも沈没船が気になります。
金銀財宝も眠ってるかも知れませんし 」
マオ
「 うぐぅ…………金銀財宝を出すなんて、卑怯だぞ 」
アリエム姫
「 良いの?
結構距離があるから遠いけど…… 」
セロフィート
「 問題ないです。
転移魔法を使えば時間は掛かりません。
この城を中心にした地図を出します。
沈没船の場所を❌してください 」
マリエム姫
「 良いわよ!
この辺一帯の地図まで用意が出来るの? 」
セロフィート
「 古代魔法は豊かな生活を送る為に生み出された便利魔法なのです。
『 少しでも楽して怠けたい 』と願う先人達が生み出した魔法です。
地図を作成するくらい出来ます 」
マリエム姫
「 何か……凄いのね、昔の先人達って…… 」
アリエム姫
「 うわぁ!
マリエム見てよ!
この地図、凄いわ!
こんなにも正確な地図、初めて見るわ! 」
マリエム姫
「 地図に書き込むなんて勿体無いわ…… 」
セロフィート
「 では余分に2枚出しましょう。
アリエム姫とマリエム姫へのプレゼントです 」
アリエム姫
「 良いのぉ?!
有り難う! 」
マリエム姫
「 嬉しい~~♥️
1枚はドアに貼りましょうよ! 」
セロフィート
「 喜んでもらえて嬉しいです。
折角ですし、広い床を地図にしましょう。
上から見れば場所の把握もし易くなります。
痛まず、汚れない様にコーティング魔法も掛けます。
正確な距離の単位も入れましょう 」
セロ…………今回は随分と親切だな。
一体何を考え──いや、企んでるんだ??
良くない事が起きなきゃ良いけど……。
双子姫はすっかりセロが見せる古代魔法に夢中だ。
「 面白い事は待っていても起きません。起こしましょう♪ 」って言ってたから、油断は出来ない。
オレが確りセロを監視しないと!!
だって、セロの暴走を止めれる奴は、オレしか居ないんだから!
此処にはオレしか居ないんだ!!
なんて、オレが1人で考えてる内にマリエム姫が地図に❌を書き終えていた。
マリエム姫
「 こんな感じかな? 」
アリエム姫
「 うん!
大体合ってるんじゃない? 」
床は既に地図に変わっていた。
中心には、この城が描かれていて、写真が貼り付けられている様に見える。
これを泳ぎながら上から見るのか。
どんな感じなんだろうな……。
セロフィート
「 沈没船の大体の場所は分かりました。
仮に武器を持ち帰れたとしても、武器を飾る場所が無いですね。
コレクション部屋を作ってしまいましょう 」
マリエム姫
「 そんな事までしてくれるの!? 」
アリエム姫
「 他の部屋に武器を飾るなんて事、お父様は許してくれないんだけど…… 」
セロフィート
「 この部屋にコレクション部屋へ通じる道を作ります。
この部屋に飾られている武器もコレクション部屋へ移動させましょう。
ポセイレードさんは武器が飾られている部屋を良く思っていないのではないです? 」
アリエム姫
「 う…うん…… 」
マリエム姫
「 …………武器集めも良く思われてないよ。
“ 姫らしくない ” って小言を言われるくらいだもん 」
セロフィート
「 武器を持ち出されて捨てられても困るでしょう。
真の趣味とは、誰にも知られず、“ 忍んで楽しむモノ ” です。
コレクション部屋は謂わば、隠し部屋です。
2人しか知らない,2人しか入れない “ 秘密の部屋 ” です。
欲しくないですか? 」
マリエム姫
「 欲しいわ!! 」
アリエム姫
「 武器が捨てられるなんて考えたくない!
お父様から隠せるなら欲しい!! 」
セロフィート
「 決まりですね。
先ずは模様替えをしましょう。
これは祖父母,両親,お姉さん達を欺く為の模様替えです。
皆が考えている “ お姫様らしい部屋 ” に変え、“ 安心させる事 ” が目的です 」
そう言うとセロは古代魔法を発動させ、室内の模様替えを一瞬で済ませてしまった。
これには双子姫も唖然としている。
セロフィート
「 此処を見てください。
立派な姿見をプレゼントします。
コーティング魔法を掛けてますから、倒れてもヒビが入ったり割れたりしません。
安心して使ってください。
“ お洒落に目覚めてくれた ” と勝手に勘違いしてくれる事でしょう 」
マオ
「 鏡が在るだけで勘違いしてくれるもんなのか? 」
セロフィート
「 身嗜みを整える為に鏡は必需品です。
立派な姿見の近くにアクセサリー箱を置いているだけで、簡単に勘違いし、騙されてくれます 」
マリエム姫
「 ………………何か悪い事をしてるみたい…… 」
アリエム姫
「 そ…そうね……。
でも、この姿見は素敵よ(////)
細工も細かいし、アクセサリー箱も素敵だわ 」
マリエム姫
「 センスが良いのは認めるわ! 」
セロフィート
「 肝心のコレクション部屋への出入り口はベッドの天幕です。
このベッドもプレゼントします。
元からあったベッドより大きくしました。
天幕の中──天井からコレクション部屋へ行き来する事が出来る様にしました。
これならコレクション部屋の存在を隠せます。
アリエム姫とマリエム姫しか入れない様に魔法も掛けました。
まさに、2人だけの “ 秘密の部屋 ” です。
コレクション部屋の中に飾られていた武器も移動させてます 」
マリエム姫
「 見てきても良いの? 」
セロフィート
「 勿論です。
コレクション部屋を見終わったら沈没船巡りを始めましょう 」
アリエム姫
「 分かったわ。
一寸見て来るわね! 」
双子姫は嬉しそうにベッドに向かう。
ベッドの上から天幕の天井へ消えて行く。
マオ
「 セロ──、立派な姿見,アクセサリー箱,立派な巨大ベッドをプレゼントするなんて大サービスじゃないかよ。
何を企んでるんだよ 」
セロフィート
「 おや、ワタシは何も企んでません。
恩を売ってるだけです♪ 」
マオ
「 恩ねぇ……。
本当にそれだけなのか? 」
セロフィート
「 勿論です♪
マオだけのセロフィートを信じてください 」
セロは慈母神の様な微笑みを浮かべながら言う。
セロの言葉を信じたいけど…………信じられないよ……セロ……。
◎ 訂正しました。
抱っこして上げてください 」─→ 抱っこしてあげてください 」




