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飼い猫の仲介で妖界役所に転職します  作者: 03Haru03
第一章 妖界役所へ転職にゃ!
5/13

5怪 初めまして。虎雅と申します。

「ひふみ様~」


ブラックカードを両手で掲げてスキップしながら廊下を進むタカラに、クロは目を半目にし、尻尾を大きく振った。そして、獲物を狙う時のように姿勢を低くして瞳孔を最大限に開き、お尻をふりふりしてタカラの背中めがけて強烈な猫パンチをお見舞いした。


「いい加減、目を覚ますにゃ!」


「ぐへぇっ!」


廊下にうつ伏せに倒れたタカラの手からブラックカードが飛んでいき、クロがそれを拾ってタカラのジャケットのポケットにしまった。


「いってー! ひどいじゃないか、クロ!」


涙目で起き上ったタカラはクロに抗議の目を向けた。


「ふんっ!」


腕組をしてそっぽを向くクロに、タカラの胸はキュンと高鳴り、クロに抱き着いて喉を撫でた。


「もしかして嫉妬してたのか? ごめんよ、クロ。何故か急にひふみさんが慕わしくなっちゃって」


猫魈(ねこしょう)特有のカリスマ妖力にあてられて、幸せホルモンが活性化したのにゃ。ひふみはああやってファンという名の下僕を作って根強い人気を博しているんだにゃん。タカラは正気に戻ったからよしとするにゃ」


クロはゴロゴロ喉を鳴らしながら満足気に頷いた。


「マジで? ひふみさん、こわっ。やっぱりホワイトじゃなくてブラック……? 契約はやまった?」


クロは顔面蒼白のタカラの肩に飛び乗った。


「大丈夫にゃ。タカラはひふみの下僕じゃなくて吾輩の下僕にゃん。光栄に思うにゃ」


「えー、自分で言う?」


タカラが苦笑してクロの鼻筋を撫でると、もっと撫でてほしそうに鼻を近づけてきた。


「かわいい~。ずっとクロ様と一緒にいられて光栄です!」


クロは満足気に頷いて、前方におててを向けた。


「タカラ、相談窓口の部署へ行くにゃん。あっちの小さいほうのエレベーターを使うにゃ」


所長室のフロアまで昇ってきたエレベーターの横に、一回り小さいサイズのエレベーターがある。そのエレベーターの前まで行き、タカラは上に行くボタンを押した。すぐに扉が開いてクロとタカラは乗り込んだ。タカラがエレベーター内のボタンを押そうと扉横の壁を見るが、ボタンは上と下の矢印しかない。


「上でいいのか?」


「そうにゃ。相談窓口に行くには、一旦最上階まで来て、それから直通のこのエレベーターで上に行くにゃん」


「へえ。一階から直で来れないんだ。ちょっと面倒だな」


「新設部署は肩身が狭いものにゃ。役所の建物内にスペースがないから、屋根の上に作ったらしいにゃ」


「屋根の上?」


エレベーターが、ガコンと振動を立てて停まり、扉がスーッと開かれた。先に降りたクロに続いて降りると、目の前に小上がりになっている四畳半の和室があらわれた。茶室のような雰囲気で、左の壁際には床の間があり、こちらを睨んで一歩踏み出している猛々しい虎の絵が描いてある掛け軸がかけられている。


入り口と向かい合っている壁には丸窓があり、閉じられた障子の向こうから日差しが差し込み、室内を明るくしている。


天井から丸い提灯のような形をしたライトがひとつ吊り下げられており、淡い橙色の明かりを灯している。


クロは四足でぴょんと軽く小上がりを飛び越え、畳の上にゴロンと横向きに寝転がり、足の毛づくろいを始めた。


タカラはボロボロの革靴を脱いで、畳の上に上がり、室内を見渡した。


「ちょっと狭いけど、おしゃれな和室って感じだな」


ガタガタッ、ガタッ、ガタタッ!


突然掛け軸が一人でに風にあおられたかのように激しく揺れ始め、タカラはビクッと体を震わせ、寝転がっているクロに抱きついた。


「ひいっ! ポルターガイスト?!」


「んにゃっ! 苦しいにゃっ!」


クロは足をばたつかせてタカラの腕から逃れ、畳の上に四つ足で着地した。


「急に掛け軸がひとりで動き出すから!」


タカラが眉を八の字にして情けない顔でクロの後ろに隠れ、揺れ動く掛け軸を見つめた。


「あれ、虎がいない?」


掛け軸に描かれていた虎の絵が消え、背景のごつごつした岩場だけが残っている。


「タカラの後ろにいるにゃ」


振り返って言うクロにつられてタカラも後ろを振り向くと、目の前に掛け軸で見たままの虎が両足をそろえて座っており、タカラは目を見開いて口をパクパクさせた。


「あ、と、と、と、虎! 食われるー!!」


タカラは悲鳴を上げながら、丸窓のある壁際まで下がって行った。


「タカラ、あやかしは人を食べたりしないにゃん。この部屋の付喪神(つくもがみ)虎雅(たいが)にゃん」


クロがタカラの横に来て、モフモフの手を虎雅の方に伸ばした。


「へっ? 付喪神? たいがー?」


困惑するタカラの方に虎雅は一歩足を踏み出し、両足を揃えてお尻を畳につけて座った。


「初めまして。虎雅と申します。以後お見知りおきを」


重低音のイケメンボイスで話す虎雅から恭しく頭を下げられ、タカラは目をパチパチさせた。


「めっちゃイケボでしゃべった。えっとー、虎雅は、あの掛け軸にいた虎のあやかしってこと?」


「虎のあやかしじゃにゃくて、付喪神にゃん。付喪神は、100年経った道具があやかしになることにゃん」


「タカラ様のことは、クロ様から聞いて存じ上げております。タカラ様の補佐役として尽力致しますので、宜しくお願い申し上げます」


虎雅は再び礼儀正しく頭を下げた。クロと同じく艶やかな、明るい茶色と黒の縞模様頭がタカラの前につき出され、思わず触りたくて手を伸ばす。


「んにゃっ!」


牙を覗かせて睨んできたクロにびくつき、タカラはそっと手を膝の上に置いた。

㊙タカラの、クロさまサイコー⤴⤴おタカラ記録 

【③ 尻尾でわかるクロさまのきもち】


ねこは表情がないから何考えているのか分からない?

いやいや、そんなことはない!


ねこは鳴き声や仕草、そして尻尾で我々人間に、何をしてほしいのかアピールをしているのだ!


クロさまのきもちはよく尻尾にあらわれる。

尻尾がピン!と上を向いていたらごきげん。

逆に下向きにユラユラ揺れていたら機嫌が悪い。

怒ったり、警戒心マックスの時は、タヌキの尻尾みたいにブワッと毛が逆立って広がり、ピンと上に立つのだ。その時のタヌキ尻尾はモフモフもマックスで、マジでかわいい!!


尻尾に表情があらわれるクロさま、サイコー⤴⤴

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