表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REbirth  作者: 柚菜
4/8

第三話

頬が痛い。なにも顔面を蹴ることはないだろう、と思う。しかもティアレは毎朝

筋力トレーニングをしっかりこなしているのだ。痛すぎる

ベッドの上に大の字に転がりながらそう思う

ティアはあの後無言で出て行った。その背中は怒りを表していた

うむ、結構初心なんだな!女同士のスキンシップに何を恥ずかしがることも無いだ

ろうに。男ならただのセクハラだけども

なぜ彼女が怒ったのか分からないまま、大の字になったユウナは考え込んでいた

「むー…」

とりあえずもうすぐ日が落ちる。夜になる

――このまま寝てしまおう

そう思って目を閉じる。因みに私はどこでも、んにゃ俺はどこでも寝れる

心の中でつぶやいた一人称を言い直してから自分を睡眠へと誘った








思わず宿屋の外に出てきたティアレはどうしたものかとため息をついていた

怒りのままに外に出てきた。しかし考えれば彼女は何も何も知らないのだ。仕方

なく…はなくとも自分が譲歩すべきだ

そこでようやく怒りが収まってきた。そして、彼女へと思いをはせる


――何も、知らない。


重い。自分がそうだったら、なんて思えないほど重い。

独り、その言葉すら分からず生きてきた。そして分かった事実は残酷、なんて生ぬ

るいものですらない…!

自分は怨んだ。恨んだ。

世界を――だって世界を壊すような力があるのだから――、人を――だって滅す

る力があるのだから――。

けれど、彼女は”世界の敵”とみなされた自分を消すことを選んだ

自分とはまるで真逆。空と海のように。ただ、はるか先まで行けば空と海は繋が

っている。そのつながりの部分はきっと、


――はぁ。


大きく溜息をついた。

私が、殺す。

ぎちりと胸が締め付けられそうだ。吐きそう。でも、それでも…

彼女が旅の途中で”生きたい”と思ってくれた、ならいいけれど。…甘い、かな

それに、彼女は”私がユウナを殺す”ということに希望を見出して今ニンゲンらしく生きている。これ以外に今、彼女には希望がないということだろう

――……難しいものだよ。甘い、なんてものじゃないや


「お、金髪の姉ちゃんなにやってんだ?」


…どうやらずいぶんと深く考え込んでいたようだ

――こんな雑魚の気配すら、感じられないとは。後5キロくらい朝走る量を増やす

か。ペースも上げて

「…何」

愛想のかけらも無い声で目の前に現れた少し肉のついた男を見上げる。どうやら

仲間はいない。暇だから、ということかな

「姉ちゃん、ちょっと俺と一緒に来ない?それなりに金はやるからよ」

肩に触ろうとした手をすばやく払いのける。男が不満そうな顔になる前に笑顔で

言う

「いいよ。私に勝ったらね?」

笑顔は忘れずに。男が一瞬顔を紅潮させる。それを見た後路地裏へ入り込む

どたどたと男がついて来るのが聞こえた。あの体系だと体は鍛えていない。つま

り鍛える必要が無いということ

魔法があるゆえに、科学はここ数年成長を見せていない。魔法が使えないものに

とってはすみにくい世界だ

それで、あの体系なら動く必要が無い、つまり魔法が結構使えるだろう

久しぶりに遊べそうだと、なんだか笑顔になった

路地裏まで来て足を止める。人は来ないし、今まできた形跡も無い。横幅は二メ

ートル、と狭い

負けたら多分、私がここで遊ばれる

「あの、えー…っとお兄さん構えを」

言ってからこっちも構える。邪魔なマントは宿においてきてある

”お兄さん”も構えを見て、私がただの小娘ではないとやっと知ったらしい。だ

ったらここで引き下がればいいものを魔術の詠唱を手早く始めた


――まだ始めの合図は言ってないんだけどね。いいよ、待ってあげる


早くも無い遅くも無い詠唱。初級の魔術。

魔術は大抵煌星スターリーが体内にある魔力を巡らせ、それを形として発動

することによって”魔術”となる

詠唱は、その発動を援助させる役目がある。因みに教科書の知識

私は魔法はぜんぜんといっていいほど分からない

「風よ、彼のものを捕縛し給え!ウィンドゥープ!」

目には見えづらい風の縄がこっちに這いよってくる

足に曲げて力を溜めてから跳躍。因みに、降星ミーティアほどではないが身

体能力は高いほうだ

飛び上がってから狭い路地の壁を蹴り、お兄さんまで距離を詰める。着地。

そこに、さっきの縄が私まで追いついてくる

もう一度ジャンプして、今度は後方へ大きく跳ぶ。着地する前に縄に追いつかれ

たら危険なのだが、仕方ない

このままでは、防衛一方になる。

一瞬の逡巡の後、地面に手を付いて体を持ち上げる。いわゆる逆立ち。その状態

で一気に足と体を回転させる

早い?そんなもんじゃない。小さいし、大きくも高くも無いけれど、それでも”竜

巻”を引き起こす

それで風の縄を断ち切る

――…目回るから嫌いなんだよ、これ

軽く音を立て着地すれば、目を見開いているお兄さんの姿があった

「…素手、で魔法を…!?あんた、降星ミーティアか!?」

「違う。彼らだったらもっと身体能力高いから、お兄さんと一気に距離詰めるこ

とが出来るし。それでもう終わり?」

「…んなわけあるかッ!」

「そうだよねッ」

いつもの無表情で言う。

意地になった。本気を出してくれるだろう

「大気よ、我に仇なすものをッッ…!?」

詠唱が終わる前に足をはらう。造作もない

無様に後ろに倒れる。ざまあw

しかし、中々のものだ。後頭部を打たないよう、身体を捻った。咄嗟の判断でそれは、悪くない

と、油断している隙にお兄さんの口が素早く動いた

「…捕縛せよ!ウィンドゥープ!!」


――しまった。


思考をめぐらす前に、身体がきしむ音を立て囚われる。目には見えない縄に

まさか倒れたまんま、攻撃してくるとは。恥よりも勝利か。こういう人は好きだなあ

ぼんやりとそんなことを思う。手を動かす。よし、動く

「へッ、ようやく捕まったな…」

「誰が?」

無表情で呟く。誰が誰に捕まったって?

「あのね、オニイサン。言い忘れてたけど私旅人。」

さらり、と事実を告げる。お兄さんの目が見開かれる。目玉とれちゃうよ

”旅人”。その言葉は今のこの荒れた状況で旅をしている人を示す。この魔物が至る所に蔓延り、町が荒れ、スリなどが常識の世界で

「は、ァ!!」

締め付けられる腕に力を込める。縄を、引きちぎる

お兄さんが吃驚している。そりゃあ、普通は考えもしないし出来ないよね

けれど、どんどん腕が上に上がる。

――お兄さんの魔力番号、イチゼロヨンヨンサン。干渉する…!!

「ぐぁぁっ!?」

お兄さんが胸を抑えて地面で転げまわる。もう一回言っとく。ざまあw

繋星ラ・ポルテだけが使える技の一つ。魔の力への干渉。本来は違うことに使う。私が出来ないことに。

それを応用した技だ。無論、体内にある魔力に干渉しているわけだから…体内に異物が入り込むのだ、苦しくないわけが無い

完全に風の捕縛が解ける。解けると同時に私を捉えていた風が解放されお兄さんのほうへ吹き飛ぶ。

人を捕らえる程度なので、威力は無い。そよ風のようなもの

それでも、お兄さんは自分の魔力が破られたことを察したらしい。顔を青くしている

「…干渉終了。」

言い終わるが早いか、お兄さんの腹部に蹴りを一発入れた。首がぐたりと地面につく。完全に意識を手放した

それを確認した後、楽な状態へ寝かせておく。

「ありがとうございました」


――中々楽しめたよ、お兄さん

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ