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溺愛されても許しません!~転生したら宿敵がいた~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【始まりの場所】

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6:なぜここに?

 アイスブルーの長い髪。横顔だからこそ際立つ高い鼻。髪色と同じ美しいローブには、銀糸で聖皇庁の紋章が、袖や裾に刺繍されている。銀色のストールを首からつけ、ヒナの墓石の前で祈りを捧げているのは聖皇――オルゼアだ。


 背後にあの日見たのと同じ、二人の聖官がいる上に、騎士の姿も見えた。聖騎士と言われる、聖皇庁直属の騎士で、ウエスト聖騎士団に所属している。甲冑以外の装備はすべて白で統一され、聖皇庁の紋章だけが、紺碧色の糸で刺繍されていた。紋章には、オリーブの木とハトがデザインされている。


 なぜ、聖皇がヒナの墓前で祈りを捧げているの……?


 祈りを終えたオルゼアが私に気づき、微笑の聖皇(スマイリー)に相応しい笑顔を、此方へ向けた。その笑顔を見せられるのは、実に十日ぶりのこと。それなのになぜか無性に懐かしく感じてしまう。


「こんにちは。クレア・ロゼ・レミントン公爵令嬢。無事、モーン・ヒル監獄を出ることができたのですね。無実の人間に誤った刑が執行されず、本当に良かったです」


 従者を連れ、ゆっくりオルゼアの方へ歩み寄ると、彼はゆっくり立ち上がり、私と向き合った。


「こんにちは、聖皇様。その節は本当にありがとうございます。先程無事、手続きを終え、自由の身となることができました。いろいろお世話になった御礼は、改めてレミントン公爵家としてさせていただく予定です。今は言葉のみの御礼で恐縮ですが……」


「御礼など必要ないことですよ、レミントン公爵令嬢。あなたは冤罪だったのですから。それを正すのは、聖皇として当然の役目です」


 聖皇として当然の役目。


 そう言い切れることに、改めて不思議な気持ちになる。いくらレミントン公爵家の名が関わった件だったとしても。オルゼア自らが動いたことには驚きしかない。それよりも、なぜここにいるのかを尋ねてみた。


「私の持つ神聖力は、基本的に怪我や病の治癒に向いているのですが、ちょっとした予知の力もあるのですよ。今日この時、この場所に足を運べば、レミントン公爵令嬢に会える予感がありました。どうやら正解のようですね」


「……私に会う予感を覚え、わざわざここへいらしたのですか?」


 めったに聖皇庁や聖皇宮から出ない聖皇が?という思いで尋ねると、オルゼアは再びあの微笑になる。


「言い訳をさせていただくなら、予知で察知することは、この国や国民、まれにわたしにとって意味があることなのです。無意味な未来を感知することはありません。きっとここに来ることは意味があるのだろうと思いました。まず一つ目は、落とす必要がなかった命を散らすことになった、ここで眠る女性に祈りを捧げよという啓示だと思いました」


 オルゼアの銀色の瞳が、ヒナの墓石に向けられる。慈愛に満ちたその眼差しは、あの魔王ルーファスとは思えない。それはそうなのだ。あくまで前世がルーファスなだけで、彼は今、聖皇オルゼアなのだから。


「二つ目は……。いささか個人的な理由ではあるのですが、聞いていただけますか」


 ゆっくりと視線を私に向けた、オルゼアの銀色の瞳と目が合う。


 これまた不思議だわ。


 この瞳が金色だった時は、猛禽類の瞳に思え、この目で睨まれると、恐怖しか感じなかったのに。今、その銀色の瞳と目があっても、そこには優しい気配しか感じられない。


 その瞬間。相手は宿敵の魔王の生まれ変わりと分かっていたのに。勇気を出してみよう。そんな気持ちが芽生えていた。


「聖皇様は、私にとって恩人でもあります。恩人の頼みであれば、どんな話でも聞かせていただきます」


 少し大袈裟かしら?と思ったものの、口が勝手に返事をしていた……というのは言い訳かもしれない。


「ありがとうございます。恩人……と思ってくださるのであれば、ありがたくご相談させていただきます」


 そう言ってオルゼアが私に相談したこと、それは……。


「今月末に、建国祭が王都でありますよね。わたしも出席を求められています。建国祭は五日間に渡り開催され、その間に様々な式典があり、それに顔を出すのは勿論、舞踏会や晩餐会も行われますよね」


 相談、だけでも何だろうかと思ったのに。私の処刑が早まることになったあの建国祭が、話題にのぼるなんて。


 前世魔王から相談を受けること自体、イレギュラーだと思う。でも建国祭が出てくるなんて。これから話がどこに向かうのか、まったく想像ができない。


「十八歳で聖皇となってから、毎年、建国祭の舞踏会や晩餐会には、一人で足を運んでいます。このような場に一人でいると、当然ですが、ホストがパートナーとなる令嬢を、わたしにつけてくださります」


 建国祭のホストは、国王陛下だ。舞踏会の会場となるホールへ入場する際、国王陛下はいずれかの令嬢を、オルゼアに任せるということになる。


 本来、舞踏会は一人で入場しても問題ない。でも令嬢としてはそれを恥ずかしく思う。パートナーの一人もいないなんて、と憐れみの目を向けられたくない。そこで最も注目が集まる舞踏会の会場への入場時、一人で来場している男性と令嬢をペアにすることが、ホストに求められるようになった。


 オルゼアとしては一人気ままに入場したいのかもしれないが、それは許されない。たいがい令嬢があぶれ、男性の人手が足りない。聖皇であろうと、一人の男性とみなされ、令嬢を任される。


 晩餐会はそもそもホストが、男女交互になるよう座席を決めるのだから、問答無用で令嬢をあてがわれてしまう。その逆もしかりで。


「二十歳になってから、どうもプレッシャーがあり、困っているのです」


 ああ、なるほど、と理解してしまう。


 オルゼアは現在、二十三歳。そして聖皇であるが、未婚であることは求められていない。むしろ結婚することを、推奨されている。


 以前は、聖皇が結婚すると、その神聖力は失われてしまうと考えられていた。よって聖皇は、生涯独身であることを求められていたのだ。ところがとある聖皇が、どうしても好きになってしまった女性ができ、一線を超えてしまった。だが、神聖力は失われることはない。失われず、聖皇の神聖力は、結ばれた女性にも宿ることになった。


 聖皇ほどではなくとも、相手の女性も神聖力が、使えるようになったのだ。さらに二人の間に生まれた子供は、確実に神聖力を持つことも判明。しかもその神聖力は、かなり強い。そうと分かってからは、聖皇が結婚することは、推奨されるようになった。


 オルゼアは十八歳で聖皇に就任したが、しばらくは聖皇としての務めを遂行することを、求められたと思う。だが二十歳となり、結婚も可能な年齢になった。そこで国王陛下は、オルゼアに結婚をすすめるようになったのだろう。


 でも政教分離もあるため、強い干渉は、国王陛下でもしにくい。そこで候補者となる令嬢を建国祭の時、オルゼアのパートナーとして、紹介しているのではないか。


「舞踏会のパートナーになった、あの令嬢はどうだったか。もし気に入ったならば、聖皇妃として迎えては?」と、国王陛下がプレッシャーをかけているのだろうと推測した。


 推測はできたが、オルゼアは私に相談したいと言ったのだ。ということはまさか……。

お読みいただき、ありがとうございました!


【ご報告】

第4回一二三書房WEB小説大賞

一次選考通過しました(御礼)

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既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?』

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― 新着の感想 ―
やっぱり、元々主人公が公爵令嬢なのにも関わらず冤罪で処刑されそうになったのって、なんか裏から操ってたとかない? 恩着せる為とか、前世の記憶を呼び起こさせるためとか。
感想一覧
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