↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺愛されても許しません!~転生したら宿敵がいた~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【建国祭】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/81

44:ここに犯人がいる

 翌日の追悼セレモニーは、建国祭の最中でもあったため、霊廟襲撃事件の関係者のみで、ひっそり行われることになった。


 服装についても黒ではなく、白や明るいグレーが推奨された。


 オルゼアはこのセレモニーで、祈りの言葉を捧げることになっている。よって純白のローブを着て聖皇冠を被ると聞いていたので、私も白のドレスを着用した。シンプルなドレスだが、身頃や裾に繊細な刺繍があしらわれている。


 追悼セレモニーの会場となったのは、奥離宮。庭園の奥深くにある、隠れ家的に存在している離宮だ。常緑樹に囲まれた白亜の奥離宮のホールには、装飾として美しいステンドグラスが飾られている。そこに、黄金の飾りと王旗をかけられた真っ白な棺が五つ、安置されていた。棺の周囲には白い薔薇、白い百合、かすみ草が置かれている。そしてその棺の前には、白いファブリックが張られた椅子が、ズラリと並ぶ。


 ヒュドラーとの戦闘で命を落とした兵士や騎士については、既に遺族に対し、多大な手当と二階級特進の手続きがなされているという。ただ、追悼の儀は後日行われることになっていた。今は建国祭の最中ということで、王族とその護衛騎士の追悼セレモニーのみが、取り急ぎ行われることになった。


 こうしてこの追悼セレモニーには、霊廟襲撃事件の関係者が、騎士や兵士を含め、全員が揃うことになる。


 それはつまり、ここに犯人がいる可能性が高い。そして実は国王陛下も、犯人がこの追悼セレモニーの場にいる可能性を考えていた――ということは、ライト副団長が教えてくれたのだ。昨晩、エントランスホールで会った時に、霊廟襲撃事件の進捗として教えてくれた。


 建国祭の前日に、建国王とその王妃の霊廟で儀式を行うことは、公にされていることではなかった。何せ出席者も限られ、建国王の霊廟は、一般開放されているものではなかったから。よってそんな場で悪さをできるとなると、当日、あの霊廟にいた者が怪しくなる……というわけだ。


 それを踏まえ、ライト副団長を含め、限られた近衛騎士達が、注意深く見守ることになっていた。このセレモニーの最中に、誰か怪しい動きをしないかと。


 ちなみにこの件は、聖皇にも話していいと言われていたので、勿論、オルゼアも知っている。加えて私は師匠からの話で、聖女が関わっている可能性も考慮する必要があった。


 そこでこの奥離宮のホールに、検知魔法をかけていた。魔法、神聖力、聖なる力、エルフの力などを、検知できるようにしていたのだ。


 つまりもし犯人がこの追悼セレモニーで怪しい動きをすれば、それはすぐにバレるということ。果たして犯人が動くのか……。動かない可能性も、多分にあった。どう考えても警備体制が強化されていることは、犯人だって分かっているはず。よってここで犯人の尻尾を掴むのは、難しいかもしれない。だが可能性は、ゼロではない。


 ということで表向きは厳粛な雰囲気の中、神妙な面持ちでセレモニーの場に足を運んだわけだが。一部の人々……私も含め、ライト副団長やオルゼアは、神経を研ぎ澄まさせることになる。犯人が何かするかもしれないことを踏まえて。


 こうして皆が椅子に着席すると、国王陛下が入場し、セレモニーの開始を告げた。続けて国王陛下は、今回亡くなった五人についての紹介も行う。それが終わると、オルゼアの出番だった。祈りの言葉が捧げられる。


 オルゼアの言葉は胸に響き、すすり泣きが漏れた。


 続いては、空の棺に、その周囲に置かれた花を入れる儀式だ。本来、棺の中に故人の体が安置されており、そこに用意されている花を飾る。だがヒュドラーの毒の万一を恐れ、遺体は既に埋葬済み。ゆえに棺の中は、事前に予告されていた通り、空だ。


 閉じられていた棺を開け、最初の花を捧げるのは、オルゼアだったが……。


 閉じられた棺を開ける行為自体が、神聖なものと見なされていた。そしてこの棺には、本来王族の遺体が安置されているはずだった。ゆえに聖官ではなく、聖皇自らが開け、最初の花を棺に納めることになっている。


 この棺に花を入れる儀式。


 実は犯人を検知できるとしたら、ここなのではないかと、私は考えていた。それは聖なる力を検知するのではなく、不自然な行動を検知するということだ。ヒュドラーの毒で三人の王族と彼らの近衛騎士二名が亡くなったのは、犯人からすると、不慮の事故だったと思うのだ。


 ゆえに「すまなかった」「馬鹿な奴め」「自業自得」のような反応を、犯人が示す可能性が考えられた。よって自分が棺に花を入れる時以外は、しっかり花をいれる人々を観察しようと思っていた。


 私が決意を新たにした時、棺に花を入れる準備が整った。


 つまり棺にかけられた王旗をはずす作業が完了し、オルゼアが一つ目の棺を開けることになる。


 急遽用意されたオルガンと合唱団が、セレモニーをあわせた優しい音色と歌声を響かせていた。ゆっくり一人目の棺を開ける――スライド式で開閉可能だった――と、オルゼアはまるで騎士のように、片膝を大理石の床につき、跪く。


 通常は立った姿勢のまま行うので、このように跪くのは珍しい。稀に深い悲しみで立っていることが不可能となり、すがるように崩れ落ち、それを周囲の人々が支えることはある。でも今、オルゼアは号泣しているわけでもなく、ただ静かに跪き、白い百合を棺に入れようとしている。


 急に跪いたからだろうか? オルゼアの顔色が青白く感じる。だがゆっくりとした動作で白い百合を棺の中へ入れ、祈りを捧げ、落ち着いた様子で立ち上がった。


 立ち上がったその顔を見ると、額に汗が浮き出ているように思えた。少し、震えているようにも感じる。


 どうしたのかしら?


 ライト副団長が駆け寄り、何やら声をかける。二人は周囲に届かない小声で会話を行い、オルゼアは次の棺へ移動し、ライト副団長は白い百合がいれられた棺を確認している。オルゼアは先ほどと同じ動作で、今度は白い薔薇を棺にいれていた。ライト副団長は、そのまま自身がいた位置へ戻る。


 すべての棺を開け、最初の一本目の花をオルゼアが入れ終えると、国王陛下から順番に、花を入れていくことなった。その頃にはオルゼアの様子は、通常通りに戻っている。顔色もいつも通りで、額に汗もなく、震えている様子もなかった。


 緊張でもしていたのかしら? もしくは……。


 一人目の棺は、王位継承者としては第十五位の、王大姪のマリナだった。美しい方だったが、気難しいことで知られ、三十歳でも独身。メイドや従者が頻繁に入れ替わることから、虐待をしているのではと噂される人物ではあったが……。もしやオルゼアは、好意を持っていた……とか?


 まさかとは思うが、オルゼアは慈悲深く優しい。オルゼアなら、マリナのその気難しい気質でさえ、自身の穏やかな気持ちで受け入れることができそうだ。そんなオルゼアのことを、マリナも実は気に入っていて……。


 もしそれが正解なら……。


 なんとも言えない気持ちになる。今のオルゼアに私は、好意を覚えていた。でも魔王ルーファスの記憶を、オルゼアが取り戻したら……。複雑な気持ちをオルゼアに抱いている中、彼が心を寄せていた女性がいたというのは……。なんとも言えない気持ちが沸き起こる。


 つい余計なことを考えてしまったが、棺に花を入れていくセレモニーは進んでいる。第二王妃のアナベルが、第二王女マヤと手をつなぎ、一人目の棺へ向かった。マヤは、一輪の花をいれるだけでは足りないと思ったのだろう。両手に花を沢山掴み、棺へ入れようとして、アナベルに止められている。


 なんだか微笑ましい。


 アナベル達の後ろには、側妃が続いているが、三番目の側妃クロエは、なんだか顔色がとても悪かった。クロエは、海に浮かぶ人口がわずか一万人という小国の姫君。年老いた彼女の祖父である現国王は、アウラ王国の属国になることを望んでいた。そこで孫であるクロエを国王陛下に嫁がせた、いわゆる政略結婚。この国には、三年前にやってきたという。


 まだ十歳で、国王陛下も結婚相手とは思えず、クロエのことを自身の子供のように思っているとのこと。文字通りのお飾り側妃で、完全な白い結婚。でもそれが仕方ないと思える幼さだったが……。


 一人目の棺にかすみ草を入れた時、強く祈りを込めたからだろうか。彼女から力を感じた。聖なる力を。

お読みいただき、ありがとうございます!

【新作公開】

『転生したらモブだった!

 異世界で恋愛相談カフェを始めました』

https://ncode.syosetu.com/n2871it/


大好きな乙女ゲームに転生した! と思ったら、名もなきモブ。

ちなみに前世では、結婚相談所のコーディネーターをしていた私。自分の恋より他人の恋に奔走していた。悪役令嬢やヒロインに転生したわけではない。ならばこの世界では、自分の恋愛を楽しもうと思ったら……。政略結婚なんて勘弁して! 自活のために恋愛相談カフェを始めた結果。恋愛はおろか他人に興味なし令息から、かまってちゃん令嬢まで、様々な悩みを聞いてアドバイス。すると意外な人物たちまで、カフェへ来るようになり……。


ページ下部にイラストリンクバナーを設置しています!

クリックORタップで目次ページへ飛びます。

ぜひ遊びに来てくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。