34:再会
「ズルいと言わないでくださいね。わたしは神聖力があるので、疲れ知らずなのです」
「あ、なるほど……」
「でもそのドライフルーツは、どれも美味しそうですね。一ついただいてもよろしいですか?」
「勿論です! 聖皇様がくださったものですから」
箱を差し出すとオルゼアはじっと眺め、考え込む。そして私に尋ねた。
「レミントン公爵令嬢が召し上がって、一番美味しく感じたものを、食べてみたいですね」
「! それでしたらこのキウィです。砂糖がまぶされているので、酸っぱさの中に甘みもあり、食感も含め、とても美味しいです」
「ではキウィをいただけますか」
そう言うとオルゼアは、ニッコリ笑う。
ニッコリ笑い、でもその手は、組んだ脚の膝の上に乗せられたままだった。
えっと……これはもしや……。
食べさせてほしい……ということなのかしら?
チラリと見ると、オルゼアはニコニコ笑顔のまま、顔をこちらに向けている。
食べさせてほしいのね……。
そう思った瞬間、顔が真っ赤になる。
ただ、ドライキウィを指でつまみ、オルゼアの口元へ運ぶだけのこと。何をそんなに顔を赤くしているの、私は! ドライフルーツ一箱、プレゼントされたのだから。それぐらいしてあげてもいいでしょう。
深呼吸をしてから、なるべく大きくて美味しそうなドライキウィを、オルゼアの口元へ運ぶ。彼は「ありがとうございます」と嬉しそうに言うと……。パクリとドライキウィを頬張る。
「これは確かに美味しいですね。砂糖のおかげで、さらに甘さを感じます」
そう言って喜ぶオルゼアを見ていると、なんだか胸がキュンとしてしまう。彼のその表情が可愛らしくて。なんだか子供っぽいところも、いつもの聖皇と違い、乙女心をくすぐる気がする。そこでつい、声をかけてしまう。
「聖皇様、アプリコットも美味しいですよ……」
「そうですか。食べさせていただけますか」
「はい!」
霊廟につくまでの時間が、こんなに楽しく甘い時間になるとは思わなかった。結局、箱の中の十二種類のドライフルーツすべてを、オルゼアに食べさせていた。
ただ、ドライフルーツをオルゼアの口元へ運ぶだけなのに。とてもドキドキし、「美味しいです」と喜ぶ彼の表情に、胸がキュンキュンしていた。
しかも全種類のドライフルーツを堪能したオルゼアは「すべてのドライフルーツを食べさせてくれたお礼です」と言い、私に神聖力を使ってくれたのだ。その瞬間、今日一日の蓄積した疲れは、一気に吹き飛んだ。まるで朝起きたばかりのように、元気になっていた。
そこで霊廟に到着し、馬車を降りると。
「「ミレア!」」と名前を呼ばれ、声の方を見て、飛び上がりそうになる。
こちらを見て、手を振っているのは、フォンスとトッコだった。
オルゼアには「魔王討伐のパーティの仲間だった」とは言わずに「前世魔法使いの時、この二人と会ったことがあるようだ」ということで、フォンスとトッコは知り合いであると、話していたのだ。
霊廟についたら、二人と話したいと思っていることを打ち明けると、オルゼアは快諾してくれていた。よって私は早歩きで、フォンスとトッコの方へ歩み寄った。