↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺愛されても許しません!~転生したら宿敵がいた~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【王都】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/81

24:甘党

 思わずあわあわしてしまう。そんな私を見ると、オルゼアはクスクスと微笑んだ。


「建国祭は明後日からですが、明日はその建国祭本番前のいくつかの儀式があり、忙しくなります。でも今日はこの挨拶が終わり、夕食会までは自由の身です。……冒険をしませんか、レミントン公爵令嬢」


「え、冒険、ですか!?」


「レミントン公爵令嬢は、魔法を使えるのですよね。姿を変えて、わたしと二人、街へ冒険に行きませんか? 既に街はお祭りモードですよ。王城へ行くため、寄り道をせず、メイン通りに沿ってきましたよね。でも既に広場や公園では、沢山屋台も出ているそうです」


 オルゼアが私と二人で街へ行く!? しかも魔法で変身して。街は既にお祭りモードで、屋台も沢山出ている……。


 品行方正な聖皇であるオルゼアが、こんな提案をするとは思わなかった。


「建国祭は、聖皇庁に引き取られる前に、両親と来たことがあるのです。あの時は自由でした。両親に『迷子になるわよ』と言われながらも、屋台を見て、公園に行って、前夜祭のパレートを見て……。久しぶりにあの時のワクワクを、体験したくなったのです。わたしだけではなく、レミントン公爵令嬢にも、このワクワクを体験させてあげたくなりました」


 その表情はいつになく生き生きとして、まるで少年のようだ。その顔を見ていると、なんだか私も楽しい気持ちになってくる。それに冒険。前世は魔王討伐パーティにいたのだから。冒険という言葉には弱い!


「分かりました。では部屋の窓を開けてお待ちください。護衛の聖騎士の皆様には、お互い部屋で休んでいることにしましょう」


 こうして部屋に戻ると、早速、魔法で変身をする。


 髪は、ゴールデンブロンドでポニーテール。瞳の色は、琥珀色に。ドレスではなく、町娘が着ていそうな、コスモス色のワンピース。ウエストに革ひものベルト、お揃いの色の革のブーツを合わせた。パウダーピンクのショートケープをはおり、コインを入れた巾着袋を、ワンピースのポケットにしまった。


 用意を終えると、窓から庭に出て、オルゼアへの部屋に向かう。


 彼の部屋が近づくと、庭にも聖騎士の護衛がずらりといる。王宮の警備もいるため、とても厳重そうだ。こうなると私は……聖騎士に私の姿が見えるよう、庭にいる全員に一気に魔法をかけた。


 窓をコンコンとノックすると、驚いた顔のオルゼアが、私を部屋に入れてくれる。


「髪と瞳の色、そして服装が違うだけで、別人ですね」


「聖皇様は髪の長さも変えて、色も変えますから、もっと別人になれますよ」


 私の言葉にオルゼアは、微笑の聖皇(スマイリー)になる。

 微笑む彼に、魔法をかけると……。


 ライトゴールドの短髪、瞳はヘーゼル色。服装は白シャツにマロン色のセットアップ、ウールの厚手のオリーブグリーンのマント、シナモン色のブーツと完全な別人になった。姿見に映る自身を見たオルゼアは、驚きで目を丸くしている。


「これなら絶対にバレませんね」


「はい。でも外に出ると、二人とも聖騎士に見えます。街へ出れば、現在の姿で皆に認識されますから」


「ふふ。レミントン公爵令嬢、完璧ですね。後は名前の呼び方を変えないと……」


 名前! 確かにそうだ。

 ちゃんとそこまで気が回るなんて、オルゼアは……これまでもお忍びで聖皇宮を抜け出したことがあるのかしら?


 結局お互いのミドルネームで呼び合うことになった。私はロゼ、オルゼアはリック。


 広い王城の敷地から、徒歩で抜け出すには時間がかかったが、なんとか街へ出ることができた。街の広場に向かうと、確かにそこはオルゼアが言う通り、既に建国祭のお祭りムード満点だった。沢山の屋台も出ているし、多くの人出がある。隣国から来ている者も多いようで、普段見かけないような外国人も沢山いた。


「さあ、楽しみましょう、ロゼ」


 エスコートではなく、オルゼアは私と手をつないだ。こんな風に異性と手をつなぐなんて、勿論慣れていなかった。しかも相手は、魔王ルーファスの生まれ変わり。それでも二人とも魔法で変装しているからか、緊張することはない。人混みだったし、そうするのが当たり前のように手をつなぎ、広場に向け、歩き出すことができた。


 もうすぐお昼に近い時間だった。

 自然と美味しそうな香りを漂わせる屋台へ、足が向かっている。


 屋台には、お祭りの定番とも言える食べ物が、沢山売っていた。今の季節だと食べ歩きできる焼いたマロン、スライスしたバケットが入ったオニオンスープが人気。甘いのものでは、リンゴ飴ではなく、チョコレートをコーティングしたチョコリンゴが、個人的には気になっていた。


「ロゼはリンゴが好きなのですか?」


「えっ!」


「さっきはリンゴ飴をじっと見て、その次はリンゴのタルト。リンゴのコンポートとアップルパイも、見ていましたよね」


 そんなに私は、リンゴばかり追っていたの!?

 そう思う反面。

 リンゴを追う私を、オルゼアがしっかり観察していたのかと思うと、急激に恥ずかしくなる。


 一方のオルゼアは心躍る提案をしてくれた。


「このチョコリンゴは、食べ応えがありそうですね。一つずつ買って、川沿いのベンチに座り、食べませんか?」


「お昼なのに、いきなり甘い物を食べるので、いいのですか?」


「ええ。わたしはこう見えて、甘党です」


 魔王ルーファスは、甘党だったの!?

 いや、覚醒していないなら、これはオルゼアの好みなのかしら?


 ともかくオルゼアは、砕いたナッツがトッピングされたチョコリンゴ。私は粉糖がまぶされ、雪のように見えるチョコリンゴを手に入れた。そして二人で広場を抜けた先にある川へと向かう。


 丁度お昼時だったので、川沿いは沢山の人々でにぎわっている。皆、手に入れた屋台の料理を、楽しそうに口へ運んでいた。ベンチはあいにく満席。そこでオルゼアは河川敷に自身のマントを敷き、座るようにとすすめてくれる。


「ロゼは楽しめていますか?」


「はい。両親と建国祭に来ても、食事はレストランで食べ、屋台は雑貨屋を少しのぞくぐらいだったので」


「そうでしたか。でも公爵家の令嬢でしたら、そうなりますよね。足は疲れていませんか?」


「ヒールのほとんどないブーツなので、大丈夫ですよ」


 オルゼアとそんな風に話しながらチョコリンゴを食べるのは、不思議な気分だった。まずは魔王ルーファスの生まれ変わりである彼と、こんな風に牧歌的にチョコリンゴを食べていることに、現実感が伴わない。


 それにオルゼアは、平民時代を経て聖皇になったことから、庶民の楽しみもよく分かっていた。私は前世では、森で自給自足の生活を師匠と送っていたのに。転生してからの貴族生活にすっかり馴染んでしまい、自給自足の日々を、既に忘れている。


 それでいて食に関する記憶は、バッチリ残っているのよね。お祭りの定番料理に詳しいのは、前世の記憶だった。


「このチョコリンゴ、よくよく考えると、リンゴをひとりで丸ごと食べたわけですよね。想像以上に、満腹になりました」


 オルゼアが自身のお腹をさすった。


「そう言われるとそうですね。揚げポテトやソーセージも、食べたかったのですが……」


 そんな風にぼやくと、オルゼアがなんだかドキリとするようなこと言う。


「もしわたしが平民のままで、ロゼも町娘だったら。こういうお祭りで出会い、仲良くなって、夕食会の時間を気にすることもなく、自由に食事を楽しめたのでしょうか」


「オル……いえ、リック、それは……自由が欲しいということですか?」


 するとオルゼアは顔を上げ、よく晴れ渡った空を見つめた。


「平民だったわたしが聖皇に選ばれ、何不自由のない生活を送らせてもらっているのです。それなのに自由を望むのは、贅沢ですよね。……ただわたしのこの力を使う相手が、限られているのが……。時々、聖皇宮を抜け、街へ行っているのですよ。実は。聖官や聖騎士が知ったら、大変なことになりますが」


「ま、街へ出て、何をされているのですか!?」


「そうですね。病院へ行くこともできない人たちもいますから。孤児院とかそういった場所に、顔を出しています」


「……!」


 お忍びをしていたことがあるのでは?と思ったが、正解だった。

 でもそれは遊びのためではない。おそらく貧民街や孤児院に足を運び、神聖力を使い、病人や怪我人を治療しているのだ。


 魔王ルーファスの生まれ変わりなのに。前世とは真逆過ぎない?


 もう、覚醒しなければいいのに。ずっとこの心優しいオルゼアのままでいてくれたら……。

お読みいただき、ありがとうございます!

本作で初めて感想をいただけて気分が盛り上がり↑↑↑ましてぽちっとしていました☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。