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余命100ありがとう  作者: Q輔
第一章「余命宣告」
8/46

ありがとう 8

 帰宅した。


 アパートの玄関のところで、立ち眩みがする。激しい倦怠感が全身を襲う。体温計で体温を測ると38度もある。コロナかな。まさか、今日病院でその検査もして陰性だったじゃないか。


 感謝病かんしゃびょうだ。感謝病が、確実に僕の体を蝕みはじめている。『余命100ありがとう』の宣告を受けてから、すでに7回も『ありがとう』を言ってしまった。その分だけ、僕は、死に近づいているのだ。


 風呂に入る気力もなく、倒れるように布団に潜り込んで寝た。


 翌朝、再度、アルバイト先のコンビニに出向く。


「店長、誠に申し訳ありません。一身上の都合により、本日付けでアルバイトを辞めさせて下さい」


 朝の店頭で、商品棚にお弁当を並べている店長に、僕は言った。


「突然だね。よければ、その理由を詳しく聞かせてくれるかい?」


「アルバイトに熱中し過ぎて勉学を疎かにすると、仕送りを止めるぞ! なんて親に叱られちゃいまして。へへへ」


 適当な言い訳をした。


「あはは。そうかあ。スズキ君は、働き者たっただけに、残念だなあ。でも、親御さんのご指示なら致し方ないね」


 黙っていた。


「了解しました。お疲れ様」


 黙っていた。


「スズキケンイチ君、今日まで、ありがとうござました」


 歯を食いしばり、無言で店を出た。


 店を出て、5メートルほど歩いて、立ち止まる。


「……駄目だコリャ。間違っている。ここは伝えるべきだ」


 店に戻り、商品棚におにぎりを並べている店長をもう一度呼び止め、


「店長! こちらこそ、今日まで、本当にありがとうございました!」



……余命、あと92回。

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― 新着の感想 ―
[一言]  人として死ぬことを選んでしまったのか!  どこかの時点で、あきらめてしまうのか?  目が離せません。  こんな、面白い作品をありがとうございます。  ……私は、あと何回?
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