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ありがとう 7
ヤバい。何となく予感していたけど、間違いない、ここは地獄の一丁目だ。
帰ろう。今日このコンビニのレジに突っ伏して死ぬ前に退勤しよう。
「ファム君、悪いけど、今日はなんだか体調が優れないんだ。出勤早々なんだけど、帰っていいかな?」
一緒に働いている半年前にベトナムから留学して来たファム君に、僕は言った。
「ダイジョブでーす! ボク一人でガンバリまーす!」
ファム君は、コーヒーを抽出する機械にコーヒー豆を補充しながら、にっこりと笑った。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
僕は、感謝の気持ちをグッと押さえて、そそくさとタイムカードを押す。
「ファム君、お疲れ様。悪いね」
「ケンイチさん、ボクが日本に来たばかりのころ、とても親切にしてくれた。ボク、とても嬉しかった。ケンイチさんの助けになるなら、ボク、ガンバルよ。ケンイチさん、お大事にー!」
「ありがとう、ファム君」
……余命、あと93回。