ありがとう 6
感謝をするなってば、自分!
いちいち感謝をしていては、命がいくつあっても足りないぞ!
次のお客は、若いヤンキーカップルだ。見たところ僕より年下だろう。
イチャイチャと身を寄せ合って店内を回り、ペットボトル2本を持って、僕のいるレジにやって来た。
「お兄さ~ん、肉まん二つちょうだい」
「やだ~、アタシ、ピザまんがいい~。お兄さん、肉まん一つ、ピザまん一つに変更ね~」
ふん、未成年が、深夜まで遊び回って小腹が空いたか。親御さんは、きっと心配しているぞ。さっさと家に帰りやがれ。
て言うか、こいつは命拾いしたぞ。この親不孝なカップルに対して、僕は自然と感謝の念が湧いてこない。こいつらなら、無言で商品をバーコードで読み取り、無言で見送ることが出来そうだ。
僕は、無愛想に、肉まんとピザまんを袋に入れ、不愛想に精算を済ませる。
よし、帰れ。愛想の無い店員で誠に申し訳ないが、でも、どうかそのまま帰ってくれ。
去り際に、ヤンキーカップルが僕に言う。
「お兄さん、夜遅くまでお仕事大変ですね」
「このコンビニのピザまん大好き。また来るね。がんばってね」
「ありがとうございましたー!」
……余命、あと94回。