ありがとう 46
教授への挨拶を終えた僕たちは、ちょうどお昼時だったこともあり、退学記念に最後の学食を食べようと、ぶらりと食堂棟へ立ち寄った。
「おい、ケンイチ! 大学辞めるってホントかよ!」
「ルミちゃん、マジで、辞めちゃうの?」
すると、食堂にいた友達に、瞬く間に取り囲まれてしまった。
「僕たち、結婚をするんだ」
「私、お腹に赤ちゃんが出来たの」
僕とルミの爆弾発言に、食堂が一気にどよめいた。
「おめでとう! 結婚式、呼べよ! 行くぜ!」
「赤ちゃんが生まれたら、絶対に抱かせてね!」
「おい、大学辞めても、たまには連絡をよこせよ!」
「ケンイチ、ルミちゃん、俺たち、ずっと友達だからな!」
学生時代の友人関係が、大人になっても同じように続くなんて、青臭い幻想は抱いていない。大学中退をして社会に出る者と、勉学を続ける学生との関係なら、否が応でも薄れていくことだろう。僕だって、それぐらいのニヒリズムは持ち合わせている。
でも、この時、瞬間の、僕たちの言葉は真実だ。
僕たちは、今この瞬間、永遠の中にいる。
「うん。いつまでも友達だよ。みんな、ありがとう」
……余命、あと54回。




