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ありがとう 44
「お義父さん、お義母さん。僕たち、ささやかですが結婚式を挙げようと思っています」
「え、そうなの?」
両親よりも驚いていたのは、ルミ本人だった。ルミの確認は取っていない。僕の、咄嗟の思い付きの独断だ。
「ほう、それはおめでたい。なあ、ママ」
「でも、パパ、ルミは妊娠中よ」
「安心してください。お腹の子に負担が掛かる前に、出来るだけ早く式を段取りします。お義父さん、僕は、あなたとルミが、バージンロードを歩く姿を見たいのです」
「そういうことなら、式の日まで何があっても生き延びねばなるまい。ぜひ参列をさせてもらうよ。ケンイチくん、ありがとう。……やべっ」
「あなたーー!」
「いやーーパパ――! 貴重な1回をーー!」
お義母さんとルミが、悲鳴を上げる。
「お義父さん、こちらこそ、快く了承をいただき、ありがとうございます。……やべっ」
……お義父さん、余命、あと2回。
……僕、余命、あと56回。




