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ありがとう 41
「――お義父さん、今なんと?」
「大学を辞めるのだろう? そっか、そっか、そ~なんだ~。こればっかりは、しゃ~ないもんね。ルミ、ケンイチくん、了解だよ」
「パパ、ありがとう!」
ルミが、ベットに横たわるお義父さんに、抱きついている。怖いぐらいあっさり承諾するので、僕はふたたび椅子からずり落ちそうになった。
「ルミ、臨月までは働く気だろう? 子育てにはお金が必要だ。しっかりお金を貯めておくのだぞ」
「何を心配しているの、パパ。働くに決まってんじゃん!」
ルミとお義父さんがはしゃいでいる。
頃合いを見て、僕は次の報告をする。
「つきましては、お義父さん、ルミさんを、僕に下さい」
「は~い」
「ありがとうございます。…………えっ?」
……余命、あと59回。




