ありがとう 4
病院を出た。
駐輪場で乗って来たバイクに跨り、ヘルメットを被りかけて、
「そうだ。ルミに電話をしなくちゃ」
と、大事なことを思い出し、バイクに跨ったまま、スマートフォンで恋人のルミに電話をかける。
ここのところずっと具合の悪い僕のことを心配して、病院で診てもらうことを勧めてくれたのはルミなのだ。一応診察の結果は報告しておかなくては。
『どうだった?」
開口一番。
「病気なの? なんの病気なの?」
間髪入れず、ルミは矢継ぎ早に質問攻めをする。
正直に言え、自分。
診察の結果、僕は不治の病、感謝病だと告げられた。
先生に「あと100回ありがとうと言ったら死ぬ」と余命宣告をされた。
さらには、あろうことか、その場で三回も「ありがとう」を連発してしまった。
ここは、そう正直に言うべきだぞ、自分。
『ねえ、何で黙っているのよ! 聞こえてる? 電波が悪いの? 私は、結果がどうだったのか聞いているの!』
なかなか話し出さない僕に対し、ルミがイライラしている。
「……ただの風邪だって」
ああ、僕の馬鹿。
『風邪?』
「先生は、薬を飲んで安静にしていれば、すぐに治るってさ。深夜のコンビニのアルバイトが続いていたから、体調を崩したのかもしれない」
『良かったあああ! 滅茶苦茶心配したじゃん! 最近のケンイチ、明らかに元気無かったもん!」
「ルミ、心配かけてごめんね」
『とにかく、体だけは大事にしてよね! 私、ケンイチに何かあったら生きていけません!」
「了解だよ。ありがとうね。……あ」
……余命、あと96回。