38/46
ありがとう 38
玄関先まで母が僕たちを見送ってくれた。
「ルミちゃん、ごめんなさいね、うちのひとが酷いことを……」
母が、ルミに頭を下げる。
「いいえ。叱られて当然です。結婚前に妊娠をしてしまったのは、事実ですから」
ルミが「頭をお上げ下さい」のゼスチャーをする。
「それにしたって、厳し過ぎるよね、お父さん」
父に直接言えないものだから、母に苦言を呈する、情けない僕。
「まあ、うちのひと、結婚前の妊娠の大変さについては、身に染みて分かっているからねえ」
「どういうこと?」
「あれ、言っていなかった? ケンイチ、あなた、私とお父さんが結婚する前に授かった子よ」
「なーーそれ!」
「ルミちゃん。悩み事があったら私に何でも相談してね。なんたって、私、フライング経験者だから」
「あ、ありがとうございます」
「いいかい、ケンイチ、死に物狂いで働いて、ルミちゃんを絶対幸せにするんだよ。お母さん、陰ながら応援しているからね」
「分かってるよ。ありがとう」
……余命、あと62回。




