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余命100ありがとう  作者: Q輔
第四章「妊娠」
37/46

ありがとう 37

「ただし、この度の妊娠・出産には賛成をし兼ねる。子供は諦めろ」


 後頭部に、父の冷酷な言葉が刺さった。


「なんでだよ、バカヤロー!」


 僕は、勢いよく頭を上げ、思春期の頃でさえ言わなかった言葉遣いで、父に反抗をした。


「子育てを甘く見るな! 大学を中退した高卒の男女に、いきなり子供を産み育てる力があるわけがなかろう! 二人で生きて行くのでやっとだ! 子供を産むなと言っているのではない! この度の子供は諦めろと言っているのだ! 子供は結婚をして生活が安定してから産めばよい!」


「…………」


 父の正論に、僕はぐうの音も出なかった。


「お言葉ですが、お義父さん――」


 この時、ずっと黙っていたルミが口を開いた。


「私は、お義父さんにお許しを頂けなかったとしても、お腹の子を産むつもりです」


「ルミさん。気持ちは分かるが、一時の気の昂りで人生を棒に振ってはいけない。きっと後悔をする」


 父が、冷静にルミを諭した。


「一時の気の昂りなんかじゃありません。大好きなケンイチさんとの子供です。後悔などしようはずがありません」


 ルミの言葉を聞き、父がまた口を閉ざした。


「………………向こうの親御さんには報告をしたのか?」

 

 長い、長い、長い沈黙の後、父が重い口を開いた。


「いえ。これからです」


「一緒に頭を下げに行ってやろうか」


「……え?」


「お前たちだけで心細ければ、わしが一緒に行って、向こうの親御さんに頭を下げてやろうかと申しておる」


「……義父さん」


 父の優しい言葉に、ルミが涙ぐんでいる。


「いいえ。この件は、二人で解決します。お気持ちだけありがたく頂いておきます」


 僕は、父の顔を真っすぐに見て、そう言った。


「うむ。ケンイチ、ルミさん、約束だ、二人で力を合わせて、必ず幸せになれ」


「お父さん、ありがとうございます!」




 ……余命、あと63回。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なんか、シリアスな展開に。  もう! 無駄撃ちしてる場合じゃなかったじゃないですか!  これから、ちゃんとした「ありがとう」が必要になってくるのに!
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