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余命100ありがとう  作者: Q輔
第四章「妊娠」
31/46

ありがとう 31

「まだ、そうと決まったわけじゃない」


「検査薬の賞味期限が切れているってこともあるものね」


「賞味期限って何だよ。食い物じゃないんだから。とにかく、ルミ、ここは、勇気を出してレディースクリニックへ行こう」


 僕とルミは、公園から、その足で産婦人科へ向かった。


 近間の産婦人科に着いた。


 予約していなかったので、二時間も待たされた。


 やがて、看護師がルミの名前を呼んだ。


 僕は、待合室のオファーで、横にいるルミの手をしっかりと握り、


「大丈夫、僕が付いている。さあ、行こう!」


 と、男らしく言ってみせる。


「やめてよ。恥ずかしいわ。その手を離してよ。私、今からエコー検査とかするのよ。邪魔だから、あなたは、ここで待っていて」


 ルミは、せっかく差し伸べた僕の手を振り払い、一人で診察室へ入って行った。


 待合室に取り残された僕は、一人ぽっちで結果が出るのを待っている。


 ルミの、子宮に新しい命……


 もし、そうだったら、どうしよう。


 僕、まだ、大学生だぜ? 


 てか、あと70回『ありがとう』を言ったら、死んでしまう身だぜ?


 小一時間後、看護師が僕を診察室へ呼んだ。


 先生とルミが椅子に向かい合わせに座っている。


 僕は、ルミの隣の空いた椅子に座った。


「……先生、どうでしたか?」


 飛び出しそうな心臓を押さえながら、僕は尋ねた。


「おめでたです」


 産婦人科の先生は、なんだかもう嫌味なほど満面の笑みでそう言った。


「え、いや、あの、その、……あざ~っす?」



……余命、あと69回。

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― 新着の感想 ―
[一言]  てゆうか、そこで「ありがとう」と言えるのが男前!
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