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ありがとう 3
「……スズキさん、あなた、命が惜しくはないのですか?」
「違うのです! そうじゃないのです! ああ、もう、僕の馬鹿、馬鹿、馬鹿!」
僕は自分の頭を、ゲンコツでポカポカと殴った。
「もう私は、何も喋りませんよ」
先生は、口をつぐんだ。
「そうしていただけますか。先生が喋ると、僕は、ついつい感謝をしてしまう」
すると、
「それでは、今日の診察はおしまいです。お疲れ様でした。気を付けてお帰り下さいね」
診察中、先生の後ろでカルテを書いていた看護師さんが、僕に言う。
僕は、無言で立ち上がり、病室を出ようとする。
すると、その看護師さんが、僕の背後からこう言った。
「スズキさん。上着、忘れてますよ」
「あ、本当だ。あざ~す」
……余命、あと97回。