ありがとう 27
僕とルミは、喫茶店で逢った。
「いらっしゃいませ~。ご注文は?」
喫茶店のやる気のない店員さんが、気怠そうにオーダーを聞きに来る。
「アイスコーヒーふたつ。ひとつは、ガムシロップ抜いて下さい」
ルミが、付き合っていた頃のように、甘いのが苦手な僕の分も一緒にオーダーをしてくれる。しばらくの気まずい沈黙の後、僕はゆっくりと話はじめた。
「ふた月ぶりだね。ルミ、元気だったかい?」
「元気よ。ケンイチは? 体の調子はどう?」
「まあ、少しは良くなった感じ……かな」
また、長い沈黙。
「……で、今日は何の用?」
「ルミ、今更どのツラ下げてって感じだけど、僕たち……」
「……」
長い沈黙。
「あの、その、ルミ、僕たち……」
「……なんなのよ。ハッキリ言いなさいよ」
「ルミ、僕たち、やり直――」
「お待たせしました~。アイスコーヒーふたつ、お持ちしました~」
あ~、もうっ。この店員ときたら、今まさに決定的な言葉を言おうって時にっ。
「ガムシロ抜きは、どちらですか?」
「はい、僕です」
店員が、二つのアイスコーヒーをテーブルに置く。
「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとう」
……余命、あと73回。




