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余命100ありがとう  作者: Q輔
第三章「ボーダーライン」
26/46

ありがとう 26

 こうなってくると、吐血道楽。


 もうね、よ~く分かりましたよ。何をやっても駄目なもんは駄目、以上!

 

 ボーダーライン見極めごっこは終わりだ。いや、ごっごのつもりはなかったが、結果的にただの悪ふざけになってしまったことは否めない。反省しよう。


 ふらつきながら病院へ向かう。


「スズキさん、からだボロボロじゃないですか! 何故こんなになるまで病院に来なかったのですか!」


 僕に余命宣告をした先生が、僕の容態を診て、呆れている。


感謝病かんしゃびょうは不治の病なのでしょう? 治療といっても所詮は延命措置なのでしょう?」


「そう言われると、返す言葉がありません。では、今日は何故ここへ」


「吐血を止める薬を下さい。そこらじゅうにケポケポと血を吐き、まともな生活が出来ない」


 僕は吐血を抑える薬をもらい、病院を後にする。


 その日から、体の調子が良くなるまで部屋に籠り、誰にも会わない生活をした。


 人に逢わない生活をしていれば、人に感謝の念を抱かなくて済むわけで、おおずと体は回復をした。


 気が付くと、ふた月が過ぎていた。


 僕は、ふと、結構な分厚さの虚しさに苛まれる。


 確かに体は回復をした。 でもこんな生活が、果たして人間らしい生活と言えるだろうか?


 人に感謝を伝えられぬ、隠者のような生活。これで長生きしたところで、お前は本当に幸せなのか?


 病気であろうがなかろうが、人間いつかは死ぬ。その最期の瞬間に、悔いのない人生だったと笑えるか?


 逢いたい。


 ルミに、どうしようもなく逢いたい。


 僕は、意を決して、ルミに電話をした。


「……もしもし」


「……ルミ。僕だけど」


「……うん。なに?」


「……今から逢える?」


「……いいよ」


「……ありがとう」




……余命、あと74回。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ふた月ぶり。  逢うの勇気ありますね。  私、無理!  どちら側の立場でも!
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