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余命100ありがとう  作者: Q輔
第三章「ボーダーライン」
25/46

ありがとう 25

 吐血ループ。


 も、もうやめよう。このパターンは、もうやめにしよう。


 こんなことを続けていたら、今日のうちに、路傍に転がるしかばねと化してしまう。


 感謝病かんしゃびょうの闘病を始めるにあたりするべきことは、どの『ありがとう』がセーフで、どの『ありがとう』がアウトなのか、そのボーダーラインを見極めることではなかろうか。


 この方向性は正しい。きっと正しいと思う。思いたい。


 ただ、ボーダーラインを見極める、その方向性を少しだけ変えてみようではないか。


 思い立ったら吉日。さっそく検証を始めるべし。


 アウトの場合は、『けぽっ』と吐血をする。これ、明白なる事実。


 性懲りもなく、表参道を一人で歩く。


 さて。気持ちの全然こもっていない『ありがとう』なら、どうだろう?


 なに語であれ、どんな言い回しであれ、感謝の気持ちのこもった言葉は、アウトなのではないか?


 きっとそうだ。真摯な感謝の気持ち、それがアウトなのだ。


 では、内心すんげ〜相手にムカつきながら、感謝を伝えたら、どうだろう?


 感謝病かんしゃびょうの病原体様が、今度こそ、うっかり見逃してくれるのではなかろうか?


 表参道を闊歩する。


 頃合いを見て、僕は、道にわざとハンカチを落とす。


「あの~、ハンカチを落としましたよ」


 僕の背後から、親切な人が声を掛けてくれる。


 うるせえんだよバカヤロー。拾ってんじゃねえよコノヤロー。そんな小汚ねえハンカチ、こちとら、わざと捨ててやったんだよコンチキショー。人の落としたハンカチ拾って善人きどりかペッポコヤロー。


 心中で相手を徹底的に罵りながら、くるりと振り向いた僕は、その通行人にこう言った。


「あ、すみまっせ~ん。ありがとうございますぅ~」


 けぽっ。



……余命、あと75回。

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― 新着の感想 ―
[一言]  むしろ、ボーダーラインのずっとこっち側で、安全に過ごすべきだと、だれか教えてあげて欲しいですね(汗)
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