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余命100ありがとう  作者: Q輔
第三章「ボーダーライン」
22/46

ありがとう 22

 吐血した。


 なんとなく予測していたが、やっぱり吐血した。


 僕は、懲りずに考えた。


 でもやっぱり、感謝病かんしゃびょうの闘病を始めるにあたりするべきことは、どの『ありがとう』がセーフで、どの『ありがとう』がアウトなのか、そのボーダーラインを見極めることではなかろうか。


 よし、思い立ったら吉日。さっそく検証を始めよう。


 先ほどのように、アウトの場合は、『けぽっ』と吐血をする。その吐血が、今後も判定基準になる。


 性懲りもなく、表参道を一人で歩く。


 『ありがとう』を、地方の方言に変換したら、どうだろう?


 ひょっとしたら、東京都民の僕が、標準語で『ありがとう』と言うからアウトだったのではないか?


 きっとそうだ。東京都民の、標準語の『ありがとう』はアウトなのだ。


 では、すんごいネイティブな関西弁で感謝伝えたら、どうだろう?


 感謝病かんしゃびょうの病原体が、僕の発言だと気付かず、うっかり見逃してくれるのではなかろうか?


 表参道を闊歩する。


 頃合いを見て、僕は、道にわざとハンカチを落とす。


「あの~、ハンカチを落としましたよ」


 僕の背後から、親切な人が声を掛けてくれる。


 ……ネイティブな関西弁……ネイティブな関西弁……ネイティブな関西弁……


 心中で呪文のように繰り返しながら、くるりと振り向いた僕は、ハンカチを拾ってくれた通行人にこう言った。


「お~きにっ」


 けぽっ。



……余命、あと78回。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ひとりで考え込むと、こんな思考に(汗)  お医者さんに相談してからだったら、やめておけって止めてくれるでしょうに。
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