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余命100ありがとう  作者: Q輔
第三章「ボーダーライン」
21/46

ありがとう 21

 ルミと別れた。


 朝、目を覚ますと、一人だった。


 当然だ。ルミはもういないのだ。


 今日からは、たった一人でこの感謝病かんしゃびょうに立ち向かって行くぞ。


 はて、と僕は考えた。


 感謝病かんしゃびょうの闘病を始めるにあたり、先ず、するべきことは、どの『ありがとう』がセーフで、どの『ありがとう』がアウトなのか、そのボーダーラインを見極めることではなかろうか。


 よし、思い立ったら吉日。さっそく検証を始めよう。


 昨晩、アウトの場合は、『けぽっ』と吐血をした。その吐血が、今後も判定基準になる。


 街へ出る。表参道を一人で歩く。


 僕は、『ありがとう』の亜種、『サンキュー』という言葉について考えていた。


 過去の経験から『サンキュー』がアウトだということは判明してる。


 ここでボクは一つの仮説を立てた。


 それは、あの時は、実に日本語チックなサンキューだったから、アウトだったのではないか? という仮説だ。

 

 きっと、日本人の僕が、和製英語化した『サンキュー』を言うのはアウトなのだ。


 では、すんごいネイティブな発音で『サンキュー』と言ったら、どうだろう?


 感謝病かんしゃびょうの病原体が、僕の発言だと気付かず、うっかり見逃してくれるのではなかろうか?


 表参道を闊歩する。


 頃合いを見て、僕は、道にわざとハンカチを落とす。


「あの~、ハンカチを落としましたよ」


 僕の背後から親切な人が声を掛けてくれる。


 ……ネイティブな英語……ネイティブな英語……ネイティブな英語……


 心中で呪文のように繰り返しながら、くるりと振り向いた僕は、ハンカチを拾ってくれた通行人にこう言った。


「てぃんきゅ」


 けぽっ。




……余命、あと79回。

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― 新着の感想 ―
[一言]  検証の目的って。  死なないためですよね?  過程で、寿命縮めてまで、検証したら本末転倒ですよねっ(野暮)
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