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ありがとう 19
けぽっ。
僕は、ふたたび吐血した。
「バーカ! アーホ! バーカ! ア……け、ケンイチ、大丈夫?!」
二度目の吐血に気が付いたルミが、僕を再度抱きかかえる。
「……出て行け」
「え? 今なんて?」
「……ルミ、ここから出て行け。今すぐ僕の前から消えろ」
「なんで突然そんなヒドイことを言うの? 私があなたに何かした?」
「自分の胸に手を当ててみろ。ついさっき、僕のことを、バカだ、アホだと、罵ったじゃないか」
「おまえが、やれっつったんだろーがよっ!」
「とにかく、同棲ごっこはおしまいだ。自分の家に、とっとと帰れ」
「つれないこと言わないでよ! まだ同棲二日目よ! 私は、ケンイチと少しでも長く一緒にいたい!」
ルミが目を真っ赤にして、僕を抱きしめる。
「ルミ、ありが……」
おっと、あぶねえ、うっかり口が滑るところだった。
「私は、ケンイチがいないと生きて行けない!」
「ルミ、ありが……」
ダメ! ダメ! ダメ! 言っちゃダメだってば!
「私は、ケンイチが世界で一番好きなのよ!」
もちろん、僕だって。
「ルミ、ありが……と」
……余命、あと81回。