ありがとう 17
「おい、こら、ケンイチ、いい加減にしろ。あんたが他人行儀な感謝はやめようと言うから、あたしゃあ、こんなくだらないことに真面目に付き合ってあげてんのよ。マジで、てめえ、舐めてんのか」
「うるせえバカヤロー。……あ、ちなみに、この『うるせえバカヤロー』は本来の意味合いでの『うるせえバカヤロー』と、くだらないことに付き合ってもらっているルミへの感謝を込めた『うるせえバカヤロー』の、フィフティフィフティの『うるせえバカヤロー』だバカヤロー!」
「も~嫌っ! 何が何だか!」
ルミが、アメリカ人女性顔負けの見事な「WHY」のポーズを決め、台所に向かった。
「ほら、ケンイチ。ナポリタンを作ってやったぞ。これが今日の晩飯だ。喰いやがれ」
不遜を絵に描いたような態度。ルミは、機嫌が悪くなるといつもこうだ。
でも、すこぶる腹が減っていた僕は、ルミがナポリタンをテーブルに置いた途端に、エサの前で「よし!」の合図をもらった飼い犬のごとく、それをガツガツとむさぼり喰う。
「うおおお、うめぇー! ルミ、これめちゃんこうめぇー!」
「うるせえバカヤロー! どういたしましてだコンチキショー!」
「おい、コンチキショーって何だ? コンチキショーは約束に無いぞ!」
「飽きてきたから、アレンジをしてみたんだコンチキショー!」
「なんだとコノヤロー!」
「やる気かヘッポコヤロー!」
「上等だクソヤロー!」
「かかってこいウンコヤロー!」
「殺すぞアリガトー!」
……余命、あと83回。