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ありがとう 11
「……ちょっと、マヨネーズを取ってもらっておいて、その絶望的な顔は何?」
ルミが、僕の態度に苦言を呈する。
「こいつは、前途多難だ……」
僕は、弱々しくそう呟いて、無くなりかけのマヨネーズの容器を両手でしぼる。
「まったく、変な人ね。フライにマヨネーズをかけることの、なにが多難なのよ」
「ルミ。今晩マジでここに泊まるつもり?」
「はい。今晩どころか、ケンイチの体調が良くなるまで、ここで連日看病を続ける所存です」
「こいつはしばらく気が抜けないや」
「え? なに?」
「いいや、こっちの話」
僕は、自分の頬をピシャリと叩いた。
気合い入れろっ! 気合いいれろよ、自分っ!
「あらら? んもう、汚い食べ方して~。子供じゃないんだから~」
ルミが、僕の頬についた米粒を取って、自分の口に入れて、無邪気に笑った。
「てへへ。あんがと」
……余命、あと89回。