初めての依頼
「…で、君の防御魔法についてなんだが」
目の前の男は、そう言いながらこちらを見つめてきた。
ここは冒険者ギルドの2階。ギルドの利用者たちが商談、面接など仕事にまつわる諸々の話ができる部屋だ。
ギルドに登録したばかりの新米冒険者・アリエル・ヘミングウェイは正直戸惑っていた。
現在、初めての依頼者と目下面談の最中。だが、その相手がどう見ても“やんごとなき”者だったからだ。
レイモンド・ハワードと名乗ったその青年。上等な鎧とマントを身に着けており身分が高いのはすぐ見てとれたが、問題は彼のマントに刺繍されていた紋章だ。
この国ーラメリア国の象徴であるペガサスが記された紋章。それを身に着けている彼は、つまり王宮仕えの騎士だということになる。
ここは城下町のギルド。王宮に雇われている騎士や役人が依頼にやってくることも決して珍しいことではなかった。
とはいえ、アリエルは前述したようにギルドに登録したてのほやほや。この春に魔導学院を卒業したばかりで、実戦経験はほぼないに等しい。
初の依頼が来ていると知らされて来てみたら、案内された部屋に待っていたのは、王室付きのマントを纏った騎士。驚かないわけがなかった。というか頭の中は疑問符だらけだ。
ええと…ギルドに登録したら、まずはお使いとか採集とかの楽なクエストから始めようと思ってたんだけど?
なぜ、経験も実績もない私にいきなり王宮から依頼?
そんなアリエルの訝しげな目線に気づいたのか、騎士レイモンドは依頼の理由についてすぐに明かした。
「アリエル・ヘミングウェイ。君は防御魔法の能力が極めて高いそうだね。今回、依頼したのは、それを見込んでのことだ」