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甘味プルースト

作者: 秋暁秋季

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


プルースト現象って匂いに関する言葉なんですよ。

味に関わることじゃないんです。

味に関わるプルースト現象があったらそれをタイトルにしてました。

「勝手な私の偏見なんだけど、神社の膝元にあって、雰囲気の良い甘味処は基本美味い。バリ美味い」

此処は神社の鳥居付近にある甘味処。売店と併設してあって、それは少々奥まった場所にある。パッと見素通りしてしまう様な所を、目敏い彼女は発見した。

上機嫌で引き戸を開けた先にあったのは、柔らかい朱色の光がそっと包み込む、レトロ場所だった。壁にみっちりと並べられた古時計や、黒鉄の蒸気機関がそうさせているのかも知れない。

彼女はその骨董店のような内観をちらりと一瞥すると、中庭の見える窓ぎわの席に腰掛けた。中庭も綺麗だった。幾つもの風鈴が天井からぶら下がり、苔むした植物達が情緒を一層掻き立てる。

「絶対美味しい。外れなぞない。絶対」

「こういう店は味に乗算する形で、景色も良いから倍に上手く感じる」

偏見なのかも知れない。でもこの一昔前の回顧的な空間が、より出されたものを美味しく感じさせるようだ。

彼女の目線はこの優しい空間に似合わず、ずっとギラギラしていた。茶色の匂いが立ち込める中で少々浮いていた。

そうやってこの情緒を吸って味わって楽しんでいると、餡蜜が届いた。一般的なものと同様、透明な寒天の上に丸まった餡子。それから果実がアクセントになってる。目の前の彼女は黒蜜のかかった餡子を口に運ぶと、僅かに眉間に皺を寄た。丁度赤子が泣き出す前の様に、握った拳に力が籠る。

「おいひい……。泣くほどおいひい」

何故だか此奴は美味いものを食べる時に、笑顔にはならない。若干眉間に皺を寄せて、少しばかり苦しんだようにして食べる。最初見た時は不味いのかと思ったが、そうでは無いようだった。

俺も口に運ぶ。餡子も、黒蜜も凄く甘い。でも絶対にしつこくないし、重くもない。いつまでも心地好く脳を蕩かす。確かに美味い。でも。

いつの間にか、お互いがお互いに食べ終わったいて、店を出た。酷暑が続く炎天下、ふと横を見ると、神聖な匂いがする。

彼女はお参りをつもりのようで、参道まで歩く。目は何処か寂しげだった。

「かき氷の方が良かったかな。やっぱ暑いしさ。でも頼めなかったんだよね……」

「あぁ、俺も」

「きっと絶対美味しいと思う。美味しくて、さっきみたく泣くと思う。でも刷り込みって言うのかな…………。此処じゃ……無いんだよね」

参道に等間隔て並べられた長椅子に腰を下ろすと、不意に頭を上げた。同じように空を見上げると、快晴が海原の如く広がっている。

「私にとって、あの世界に引き摺り込んでくれたのは、彼処だけなんだよね。だから何時までも比べちゃう……」

「元カレ、元カノ引き摺る感じと似てるのかも。でも忘れなくて良いんだ。それだけ大切な思い出なんだから、忘れる必要なんてない」

そう言うと、彼女は大きく目を見開いた。そっと手を握り閉めてきた。素肌を焼く熱気の中で、彼女の熱もとろりと流れ込んでくる。勿論暑い。けれども振り払う。という動作は思い浮かばなかった。

「君のお陰で、次はもっと美味しく食えると思うよ」

それからそっと頬にキスを落とした。

「これから宜しくお願いします」

何でもそうですけど、一発目って引きずりません?

(私だけかな……)

ずっと引き摺り続けて、忘れようとして、忘れられなくて、自暴自棄になってるキャラが好きです。


某小説の放浪癖のあるお母さん、大好きです。

娘のこと放ったらかしにしても、燃やしたかったんだろうなって。碌でもないけど、凄い一途だなって。

これで分かったらお友達になれそうです⸜( •⌄• )⸝

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