魔法学は奥が深い
城に戻ってほっとする間もなくとは、このことをいうのだろうか?!
なんとアメリーが一週間もたたないうちに城にやってくるというのだ。
なぜ?
と思うが、多分母上の差金に違いない。
ルンルンと花が舞うのでは無いかと思うほど機嫌の良い母上。
カサヴァーノ家から帰宅しての僕の反応に何か感じたのかもしれないが、落ち着いて一人になって考えてみたかったんだ。
アメリーに会うのが決して嫌なのでは無いが、ちょっと距離を置き、あの時の僕の気持ちや行動を整理してみたかったのに・・・
子どもの僕の思いとは裏腹に、明日はアメリーが城にやってくることになっている。
表向きは僕と一緒に魔法学を学ぶらしいが、本当の目的はその後予定されている母上とのお茶会だろう。
気が重い
傍で見ていたランバートが複雑そうな表情をしていた。
「ファーレン殿下には心の整理をする時間が必要なのかもしれませんね」
「心の整理?!」
「はい。今までの自分と今の自分、そしてこれから変わってしまいそうな自分への不安と期待。それらを、気持ちがまだ追いついていない為、考える時間が欲しかったのだと思います」
「今の自分とこれからの自分・・・」
まだよく分からない。
そう言う僕に、まだ殿下もお子様で安心します、と優しく笑ってくれた。
まだ僕は3歳なのに周りが、子どもらしくない僕を大人にしていることになぜみんな気づかないのだろうか?
同じように子どもらしからぬアメリーは家族にあんなに愛され、子どもと変わらない接し方をされているのに。
今までの自分を棚に上げ、僕は憤慨していた。
そんな僕の年相応以上の表情に、「そこがいけないんですよ」とランバートが苦笑いした。
今日はアメリーと一緒に魔法学を学ぶために、魔法学者が揃う魔法塔に行く。
魔法塔はその名の通り、魔法に従事している人が揃う場所である。
魔法学者、魔法使い、魔法騎士、魔法医療、魔法薬学・・・
この国でも魔力がある人は数が少ないので、それほど人数はいないが、魔法が使える者はここで研究や国のために働いている。
王家に連なるものは少なからず魔力を持っているので、僕ももれなく魔力があるようだが、まだ子どもなので魔力測定はしていないが、たぶん力はあるのだろう。
魔法は個々の魔力量に匹敵した力を出す。
王家の人は魔法の中でも特化した特別の魔法を持っていることが多い。
僕の父上様、現国王は『守り』の魔法が使える。
国を守る国王としては一番求められる力なのだが、父上様は僕に常々『護る』ではないと言っている。
どちらも同じなのでは?と聞くと、そのうち分かるよと頭を撫でながら目を細めて僕の中の何かを見るような表情をする。
くすぐったいような変な気持ちになるが、まだ分からない。
母上様は『浄化』の魔法が使える。
母上様はルノアの人ではない。
遠い遠いイナジス王国の辺境に住んでいたというが、それ以上は教えてくれない。
母上様の魔法は魔法なのだろうが何かみんなと違うような気がする。
聞いてみたことがあるが僕が気づいたことに驚き、「そうあなたには分かるのね」と優しく抱きしめてくれた。
僕には?でいっぱいだったが、母上と父上は嬉しそうに微笑んでいた。
そのうちあなたが大人になり心から大切な人が護れるようになったら教えてくれる約束をした。
だから、いつか教えてくれるのだろう。
そんな風に特別な魔法は特に強い魔力のあるほんの一部の人が使えるだけで、日常で使える魔法はまた別にある。
風の魔法、火の魔法、地の魔法、水の魔法、そして特別な光の魔法に花の魔法。
特化の魔法がある人は普通の魔法を使うのが苦手なようで父上様は風の魔法以外は苦手のようでへたくそなのだと言う。
母上様はどれも使えない。
魔法は奥が深く、不思議なものだと感じる。
魔法塔に行くと、アメリーが先についていた。
「レン様おはようございます。今日はご一緒させていただけるとのこと、ありがとうございます。私、魔法学の勉強初めてなのでとても楽しみにしていますの!」
「おはよう、アメリー。今日も元気だね」
朝から大輪の花が開くような微笑みを見せてくれるアメリー。
会うことに躊躇していた自分が嘘のように、心の中が温かなものに満たされるような感覚がした。
ランバートが心の整理と言っていたが、僕の心はどうにかなってしまったのではないか?
会わなくなって1週間しかたっていないのが嘘のように、僕の心を満たす優しい笑いと心地よい声を、魔法学の先生が来るまでの時間、アメリーの話を穏やかな気持ちで聞くのだった。
ファーレンの父上様と母上様のお話を別枠で書き始めましたが、まだ中々うまく進みません。
設定などだいぶ出来ているのですが、アップできるのが目標!
皆様のお目に触れられるようがんばります。
裏設定ですが、母上のユーフォニア様もちょっと特別な人です。




