添い寝はくまちゃんと3人で
宣言通り、夜になるとアルメリア嬢はお気に入りのくまちゃんを片手に僕の部屋を訪れるのだった。
「本当に一緒に寝るんですか?!」
僕の問いかけにお任せ下さい!とギュッと手を握り締めにっこり笑う。
「一緒に寝れば、悪い夢なんて絶対見ませんよ!」
と、なんの根拠もないが自信満々な表情と意気込みだけは感じられる。
ランバートは、何かあったら呼んでくださいと苦笑しながら、自分に与えられた続き間に下がっていった。
お邪魔します・・・
と言ったアルメリア嬢は、ベットによじ登り僕の左側にコロンと寝転がり、僕を見てにっこり笑ってくれた。
あれ?
嫌じゃないかも・・・!?
今まで誰かがそばにいることにも、笑いかけてくれることにも特別興味がなかったけど、家族以外にはあまりいい気持ちがしなかった。
初めてかもしれない。
ここにいてもいいと思えた人は。
そばに居てもいいかもしれないと思ったからといって、急に親密になるわけでも心を許すわけでもない。
僕の心の奥の方が少し変わっただけ。
なので、アルメリア嬢が家族のことや庭園の花についてや、お気に入りの絵本の話など色々してくれるが、話しの内容についてはハッキリ言って全く興味が持てなかったので、話半分しか聞いてなかった。
そんな僕の様子にいち早く気付いて頬を膨らましながら、
「ファーレン殿下!お話しはちゃんと聞くものですよ」
「は、はい。ごめんなさい」
正論をズバッと言われて僕は謝るしかなかった。
それにしても驚いた。
興味がないことも、話しを聞いていなかったことにも今まで気付かれたことがなかった。
無表情、無関心、無気力・・・
やる気の無さを作った笑顔の中に隠すのが上手になっていたはずなのに。
大人でも気付かないのに僕のウソはこの小さな少女には通用しないのか。
嬉しい・・・のかもしれない。
なんで?
話しをしながら段々眠くなってきたようで、小さなあくびをするアルメリア嬢。
「アルメリア嬢、眠たいなら寝ようか」
「・・・アメリー・・」
「えっ?」
「アルメリア嬢なんて呼ばれ方はイヤ。アメリーって呼んで欲しいの」
多分もう眠くて寝ぼけているのだろう。
目を擦りながら、僕の目を見る。
その瞳から目が離せず、知らず知らずのうちに頷いていた。
「うん、アメリー。じゃあ、僕のことはレンって呼んで」
「・・・レン・様・・」
アメリーは僕の名前を呼びながら瞳を閉じあっという間に寝てしまった。
スースーと規則正しい寝息に、なんだか笑みが漏れてしまう。
今日は普段と違うことが多すぎて、僕も疲れた。
寝ようと大きなベットの中アルメリアと距離をとって横になり瞳を閉じた。
どうせ中々眠れない・・・と思っていたはずが、気付くと僕もあっという間に眠ってしまった。
アルメリアと距離をとって寝ていたはずなんだけど・・・
朝目を覚ますと、僕の左手とアルメリアの右手がギュッと握りあい、寄り添うように眠っていた。
目の前に瞳を閉じて眠るアルメリアに驚いて飛び起き、ベットから落ちてしまったのは僕とランバートの2人だけの秘密だ。




