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転生モブ令嬢の幼なじみはヒロインを御所望中  作者: いちご
花祭りと婚約と(17歳編)
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二人の花祭り

昨日まで予定が詰まっていた私たちは、のんびりと少し遅めの朝食を食べる。

久しぶりに時間に慌てることなく食事をいただくことができた。

壁際に控えて給仕をしてくれる侍女の方も、普段よりゆっくりお茶を出すなどしてくれる。


「リア、服装対策についてはミーナに渡してあるのを着てね。支度ができたら俺の執務室に連絡をくれたら玄関ホールで待ってるから」


「お仕事溜まってるの?」


「ん〜少しね。でも、基本花祭り中は仕事はしないことになっているから、急ぎのものだけ。でも、リアの支度が整ったらすぐ行けるようにしておくから安心してね」


じゃあまた後でね、とにっこり笑って食事を終えて自室に戻る。



服装対策といっても、中に何か着るくらいしか無いだろうと思っていたけど、ミーナに渡された物は思った通りのものだった。

白地で袖口は三角のように尖っていて、その先がリングになっていて中指に引っかかるようになっている。

肌触りの良い生地に金の縁取りがされているし、スパッツみたいなものは膝下までで、白地に金の刺繍が施されている。

急なわりにはちゃんとしていて驚く。

よく3日でここまでのものを揃えたなぁ。

ちゃんと元の衣装に合っていて、重ね着しても全く違和感がない。


「さすが殿下ですね」


あまり表情に出さないミーナも驚いていた。


今日は髪を上げお団子のようにまとめてから肩下まで下ろした感じになっている。

長く下ろしていることが多い私にしては珍しく短めな髪型だ。

お団子には金と緑の細いリボンが結ばれていて髪の長さより長く垂らし、レンにもらったエメラルドのペンダントをつけて支度は出来上がりだ。


「では、殿下の執務室にご連絡をして参ります」


ラーシアがレンの執務室に私の支度が出来たことを知らせに行ってくれたので、私も王族用の玄関ホールに向かうことにする。


急いで来ると言っていたレンだが、書類を見出してしまうと途中で放り出すわけにはいかないのだろう。

戻ってきたラーシアが殿下から少し待っていてほしいと言われたと話を聞く。

今日は特に約束もないし時間に追われることはないのだからと、私はホールのソファに座りミーナとラーシア、トリニティと談笑して過ごしながらレンを待つことにする。



「ごめんリア!すぐ来れなくて本当にごめん」


しばらくすると慌てたようにホールの中央階段をレンが降りてくる。

そんなに待たずに来てくれたのに、慌てた表情をさせてしまい反対に申し訳なく感じてしまう。


「今日は誰かと約束も無いし時間に追われてないんですから、そんなに慌てなくて大丈夫ですよ。レンこそお仕事お疲れ様。もう大丈夫なの?」


小首を傾げてレンを見つめるとにっこり微笑み、大丈夫と言って座る私に手を差し伸べ立たせ、私の衣装を上から下まで確認するかのように見て頷いた。


「うん、これなら完璧!!用意しておいてよかった」


透け素材に変わりはないが、肌は隠されているので城下に行くには安心だ。


「とってもいい感じに合わせられたんだけど、いつ用意したの?」


「ほら衣装合わせの時にリアの服を聞いた事があったでしょ。教えてもらえなかったけど、俺の服に透ける生地が使われてたから予防のために一応用意しておいたんだ。俺のカン!凄いでしょ!!」


ニヤリと笑いながら言うが、かなり凄いです。


「完璧お揃い。色も白だし婚礼の衣装みたいだね」


「えー///そ、そのようにも、み、見えますかね(恥ずかしい)」


嬉しそうなレンの言葉に、私は真っ赤になっているだろう。

そんな私たちをミーナたちが優しく見守っていてくれたのだが、恥ずかしがっている私はそれどころではなく、全く気がつくことはなかった。



「今日は俺がしてあげるね」


そう言ってレンが私の頭に手を添え魔力を流してくれると、髪の色が金に変わっていき、お忍びで出かけの時の髪の色になる。


「では、行ってらっしゃいませ」


3人に見送られレンと手を繋いで王城を後にする。


ミーナは今日は城で私たちが帰るまでラーシアたちと女子会をしながら、花祭りを楽しむのだという。

あまり表情に出さないミーナだが、嬉しそうな微笑みを見せてくれた。

なので今日の私たちの護衛にはジンさんがついてきてくれている、はずだ。

レンは自分だけで平気なのにと言っているが、王太子と王太子妃がノコノコ二人で出かけるわけにはいかないだろう。



私の歩く速さに合わせのんびり歩いてくれるレンと二人で大門をくぐる。

昨年は一人でこの大門を走り抜けて行ったんだっけ・・・

チラッと手を繋いでくれているレンを見上げると、にっこり笑いながら私の考えていることが分かるかのように、


「今日はどこかに行ってしまわないよう手を繋いでいようね」


と、釘を刺されてしまう。


「は〜い」


私は素直に返事をするとギュッとレンの手を握り返した。



「ひっさしぶりだなぁ、レーン!相変わらずの男前で羨ましい限りだぜ。アルちゃんもますます美人になって、レーンばかりでなく俺とも遊んでくれよ」


「ガイ、それ以上言うとおまえでも許さないからな。アルは俺のだ」


「ヘイヘイ。全くおまえは昔から変わらんねぇ」


ニヤニヤ笑って全く悪気もなくレンの肩を抱いている人は、この辺りの元締めをされているディーラー商会子息のガイザック・ディーラー。

歳は私たちより一つ上で、成人として商会の仕事を任されていると聞いている。

昔からレンと二人でこっそり私が知らないところで色々やっていたようで、多分彼は私たちが誰か知っているはずだ。

でも、昔からそんな様子は一切見せず、街の友人として接してくれている。


「おやおや!!アルちゃん!!一年ぶり!!」


「うわぁ、おばさんこんにちは!昨年はパンのお礼に来れなくてごめんなさい」


「いいの、いいの。元気そうで何よりさ」


パン屋の女将さんが豪快な笑い声で私たちを迎えてくれる。

そこでハタと昨年のことが頭に蘇る。

そうだった、レンが彼氏に昇格したとか、長年の思いが伝わったとか言われたんだっけ・・・

今の私たちはお揃いの服を着て手を繋いでいる。

は、は、は、恥ずかしい///

真っ赤になって俯いてしまった私にどうした?と心配そうなレンの声と、は、は〜んと言う女将さんの声がする。


「昨年ね、とっても可愛い女の子が一人で祭りに来ていたんだよ。いつもなら隣にいるはずの男の子がその時はいなくてね。からかい半分今日は彼氏は居ないのかって聞いたら、真っ赤になって狼狽えるのなんのって。今まで男の子の好意なんて全く気付いてなかったのに、これは進展があったんだなぁって嬉しく思ったよ。お祝いにパンをあげるとペコペコしながら帰ったけど、まさか今年は花嫁衣装を見せに来るなんてね」


「花嫁衣装じゃありません!!!」


大きな声で思わず否定してしまってから気づく。

やだ!

周りのみんなの注目を集めてしまったじゃない!!


パン屋の女将さんの話を聞いていた周りの人たちがドッと笑い出し、バンバンレンの肩を叩いて口々におめでとうなんて言ってくるから、私は余計に赤くなってしまい顔が上げられなくなってしまった。

一緒にガイさんまでお腹抱えて笑っているし、もう穴があったら入りたい・・・


「マジおまえら婚礼衣装みたいだよな。お似合いだぜ」


「アルは何を着ても可愛いし似合うのは当たり前だが、婚礼衣装なら来年見してやれるぞ」


「はっ・・・!?」


レンの惚気のような言葉と爆弾発言に周りの人たちが一瞬固まりシンとなる。

レ、レンさんそれは問題発言なのでは?!


「先日めでたく婚約を受け入れてもらえたんでな。来年には名実ともに俺のものになる」


サラッと言ってますが、王太子殿下。

私はものではありません・・・


「そいつはめでたい!!レーンおめでとう!!」


ドッと歓声が上がり、ガイさんやパン屋の女将さんにご主人、周りのみんなが口々にお祝いの言葉をかけてくれる。


「めでたいから、これはうちからのサービスだよ。あるうちはみんな飲んでいっておくれ!」


女将さんがパン屋の店先でパンと一緒に売っている、ビールと果実水イチゴとブドウをみんなに配りだし、飲んで祝っての大騒ぎになる。

私たちも果実水をいただき次々にお祝いを言われて、嬉しいやら恥ずかしいやら。


「そういえば、我が国の王太子殿下もご婚約が決まったんだってな~。そっちもめでてぇことだ」


「それも絶世の美人のお姫様で、王太子殿下もかなりのイケメンらしいから、美男美女だって噂だよな」


レーンとアルの婚約話から王太子殿下と王太子妃殿下の婚約話に話題が変わってきたけど、どっちも私たちなんだけどな・・・

でも私はレンと比べて美人と言われる部類には入らないと思うのだが。

この国は王様と王妃様の姿絵はあるが、まだ王太子の姿絵は世に出ていないから、レンのことはみんな知らないんだよね。

王太子はかなり究極のイケメンですよ!って言いたい。


「でも兄ちゃんたちも綺麗な顔しているよな。きっと王太子に負けてないぜ!」


「だといいけどな。あぁ、アルは世界一可愛いぞ」


そういって私の額にキスをするので、周りからヤジが飛び交いまたまた大騒ぎになってしまったが、こんな風にみんなからお祝いされるのが嬉しくて、まだ自分に完全な自信を持てない私だけど、この人の隣で頑張ってみようと改めて思うことが出来た。

そんな私の思いを感じたのか分からないけど、レンが嬉しそうに優しい微笑みを私に向けてくれるのだった。



それから一年たたないうちに私たちの結婚式が行われ、結婚パレードを見に来てくれた女将さんたちが、私たちに気付いて驚いて腰を抜かしたとか泡喰ったとか・・・

婚礼衣装は見せたぞ!なんてレンが言っていたのは内緒の話。


やっと婚約までこぎつけました。

これで一応花祭りと婚約編は完結します。

次回は、本篇のレン視点のお話です。

引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

また誤字脱字を見つけてくださってありがとうございます。

いつもいつも感謝です。

気を付けているつもりなのですが、まだあります(笑)

後日こっそり直します。

これからもよろしくお願いします。

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