10年たちました
私が『私』になって、10年がたった。
10年の間に、色々なことを学び私も変わった。
淑女としての知識、振る舞いなど当時悩んだことは日々の努力で補えるようになり、リンデル公爵夫人も驚かれるほど完璧にこなせるようになった。
そして母様からは王族としても通用するのではないかと思われる完璧な所作に、マナーにダンス。
そして何に必要なのか今だにわからないけど、この国の歴史や王族しか知らないようなことまでも教えて頂いた。
またレン様とご一緒に、隣国の言葉と大陸公用語の4か国語をマスターした。
といっても、大陸公用語は『私』が生きてきた世界の英語と同じで、東国の言葉は日本語だったので、覚えたのは2か国のみ。
レン様も同じように2か国と大陸公用語はすぐにマスターできたので、二人で残りのグリータリア皇国語とイナジス語は会話に困らない程度は覚えることが出来たけど、まだ完璧にはマスターできていない。
この国の淑女教育ってこんなに大変なの!
何度も挫折しそうになったけど、兄様たちやお父様、お母様に励まされて何とかこなすことが出来た。
家庭教師と家庭内の淑女に完璧に教え込まれた私は知らなかったが、こんな英才教育はみんな受けることはないそうだ。
それを知ったのは、ヴァージニア学園に入学して同い年の皆様とお話をしてだった。
「やはり、あのお噂は本当だったんですね。アルメリア様がファーレン殿下の王太子妃になられるって!」
「え!?王太子妃ですって!」
耳を疑うような発言は、ヴァージニア学園の入学式典の後、サロンで同じクラスになられるご学友の皆様とお茶をいただいているときだった。
「違うんですか?王太子妃になられるご教育は、アルメリア様しかお受けになっていらっしゃらないとお聞きしていましたし、私たちも淑女教育を受けてきましたが、大陸公用語を少し話せる程度でその他の国の言葉など覚えておりませんわ。皆様も同じでしょ?」
「えぇ」
顔を見合わせ頷く皆様に、軽いめまいを感じるのはなぜでしょう。
手に持っていたカップを取り落とさなかった、自分を褒めたいくらいだ。
「王太子妃なんて私には務まりませんわ。それに殿下とは幼馴染で歳の近い方が私しかいらっしゃらなかったから、一緒に学ばさせていただいたのだと思います」
心の動揺を隠しつつ、にっこり微笑んだ。




