想像通りで悪かったな(レン視点)
執務室に戻るとソファでリアが気持ちよさそうにぐっすり寝ていた。
これは、いったいどういうことだろう?
その側でジュロームとジンがチェスを楽しんでいる。
「おっ、殿下終わったのか。よしこれでチェクメイトだ!」
「くーっ、三勝二敗か。僕もまだまだだな」
俺が謁見している間、こいつらは何を楽しそうにチェスなんぞしているのだ。
それもリアの可愛い寝顔付きなんて許せない。
「殿下お疲れ様でした。どうぞ」
ミーナがリアの横の席の前に紅茶を置いてくれ、俺はリアの隣に腰を下ろす。
可愛い。
無防備な顔でスヤスヤ寝ているリア。
この寝顔を堪能していたと思うと、なんだか嫌だな・・・拗ねる俺に、ジンとジュロームは吹き出しミーナは横を向いて笑いを堪えている。
「殿下の顔が、想像通り過ぎてツボに入った。俺たちにまで嫉妬するなんてあり得ないだろう」
笑いが止まらないとジンは腹を抱え、ジュロームは肩を揺らし、ミーナも小刻みに肩が震えている。
そんなにわかりやすかったか?!
恥ずかしいし腹が立つが、想像通り嫉妬していたので紅茶を飲んで落ち着くことにする。
ミーナの淹れる紅茶は絶品だ。
落ち着くと同時に自分の嫉妬や執着に我が事ながら呆れてしまう。
気心知れた仲間にすら嫉妬してしまう自分の器の小ささ。
リアに対する俺の執着はあまりにもどす黒くて狂気に近い。
自分でも分かっているが、昨年の一件以来失うことが怖くてたまらない。
リアの了承を取らずに魂を繋げたことで死ぬ時は一緒でも、心変わりされたら?拒絶されたら?
俺は生きていけない。
そばに居られないなら、自分で手にかけ来世に逃げてしまうかもしれない恐怖。
深呼吸をして心の中の闇を吐き出す。
大丈夫、大丈夫。
リアは俺だけを愛してくれているから、そんなことにはならないはずだから。
「殿下は馬鹿正直だがら、態度に出過ぎ。でも姫様にはそれが嬉しいのかもね」
「そうですね、この姿を見たいって言われたからって、お疲れでも待っているくらいですからね」
(えっ?!)
ジンとミーナが優しく笑って言う。
愛されているから大丈夫。
だから自信を持て!と言われているみたいだ。
言わなくてもみんなには俺の葛藤なんてお見通しなのだろう。
それに多分そうなりそうになった時に止めてもらえる人たちがいるから大丈夫。
安心するとなんだか口角が上がってしまう。
「殿下、あまりにも単純です」
「五月蝿い、ジュローム」
軽口が言えるようになった俺に安心したのだろう。
3人は退出の準備を始める。
「では殿下。僕は明日からメアリと花祭りを楽しんで参ります。もしお時間が取れましたらご連絡下さい。メアリもアルメリア様と過ごせる事を楽しみにしていますので」
「中々終わらなくてすまなかった。メアリアン嬢にもよろしく伝えて欲しい。ジュローム、花祭りおめでとう」
「花祭りおめでとう、ファーレン」
最後に友として挨拶をしジュロームが退出し、外におりますと声をかけ、ミーナとジンが出て行く。
隣で眠るリアはまだとうぶん目を覚ましそうにない。
俺も疲れたなぁとリアに寄り添うように目を閉じた。




