婚約発表
レンと一緒に王族の居住スペース側から、舞踏会の会場に続く入り口の前に立つ。
ここからは入ったことないな?
どこに出るのだろう?
まだデビュタントもしてない私が来てもいいものなのか?
など、色々不安になる。
舞踏会の会場はレンと一緒にちょっとしたパーティーや昼間に行われる大きなお茶会などで来たことがあるが、国内外の来賓がいらっしゃる大規模なものは初めての参加となる。
・・・あれから一年か。
色々あった一年だったなぁと思う。
色々な意味でレンとの絆が深まった一年だった。
レンの顔を見上げると、どうした?と聞かれる。
「昨年はご迷惑をおかけしました」
「あんな無茶はもうごめんだからね。これからは一人の命じゃない事忘れないでね」
俺も一緒だからねと呟き、私の腰を引き抱き寄せると額をこつんとつけて笑う。
う〜ん、言い方が身重の奥さんに言ってるみたいだけど、魂の共有っていう意味では間違ってないからな。
「あらあら、可愛らしいカップルですこと。アルメリアちゃんがファーくんに染められているところが独占欲を感じて引くけど、とてもよく似合っているわ」
「リアは何を着ても可愛いですからね」
王妃様の言葉に、レンはさも当たり前というように腰を抱き寄せたまま私の額にキスをする。
両陛下とエリシオン殿下の前なのに恥ずかしい。
「今日二人の婚約を発表しようと思う。アルメリアは今日からこちら側の人間になるから、私たちと一緒に入場しファーレンの隣にいるように。ただ、先ほどの式典の魔力放出が予想外だったので、各国の反応と対応には注意をするよう」
「畏まりました」
陛下の言葉に、二人で頭を下げる。
この正装を見れば、今日婚約を発表するのだろうと思っていたが、発表前にやらかした感があります。
陛下申し訳ありません。
ラッパの音が鳴り、陛下の入場を知らせる。
両陛下に続きレンにエスコートされ、私も一緒に中に入る。
そこは5段ほど高くなった舞台のようになっていて、両陛下の玉座があった。
お二人がそこに腰掛け、レンと私は陛下側に、エリシオン殿下は王妃様側に並んで立つ。
陛下の着席と共に首部を垂れていた会場内の人が顔を上げ、壇上の陛下の言葉を待つ。
周りを一瞥してから、陛下が話を始めた。
「先ほど無事に今年の花祭りの式典が滞りなく取り計らわれ、花祭りを開催することができたことを皆に感謝する。花の女神より各国のこれからのますますの発展と健康が祝福されるであろう。
また、ここに王太子ファーレンの婚約を発表する。相手はカサヴァーノ侯爵家令嬢アルメリア。皆にも若き二人のこれからを支えていってもらいたいと思う。
今日は皆と一緒に花祭りを祝い、共に花の女神への感謝を述べると共に、時間のある限り楽しんでもらいたい。ここに花祭りの舞踏会を開催いたす」
音楽が鳴り舞踏会が始まった。
レンと陛下に挨拶をしダンスホールに下りる。
「姫君、お相手いただけますか?」
「喜んで」
向かい合いお辞儀をしてからお互いの手を取り曲に合わせて踊り出す。
そして慣例にならい婚約者や配偶者とは続けて三曲踊る。
王太子妃教育の賜物!完璧に踊り切ることができたのだ。
レンとは今までたくさん練習で踊ってきたけど、今日は特別に気持ちよく踊ることができ、とても楽しかった。
会場の視線を一手に受けていた自覚はあるが、踊り終えた時にたくさんの拍手をされ驚くが、表情には出さずに静かに膝を折り、レンとダンスホールを後にしテラスに出る。
「風が気持ちいい!」
ダンス後の火照った頬が、風に吹かれとても気持ちいい。
「やっとこれからは、リアは俺のものとみんなに言うことができて独占できるんだね」
「いやいや特に変わってないと思うよ。今までだってかなりの独占欲丸出しだったでしょ」
嬉しそうに後ろから腰に手を当て抱き寄せ、首元に顔を埋めて私をすっぽり包み込むように抱きしめる。
「婚約を受け入れてくれてありがとう。これから今まで以上にリアを大切にするから、ずっと俺のそばにいてね。大好きだよリア」
「私の方こそありがとう。私もレンのことが大好きよ」
くるっと振り返り、レンの頬にキスをする。
ちょっと驚いたような表情をしてから、レンが私の顎を上げると唇にキスをした。
しばらくテラスで二人の世界という名のいちゃいちゃを見せつけていたようだが、その時の私たちは気づいていなかった。
後にフレイアに指摘され、顔が真っ赤になる程恥ずかしかったのも、婚約のいい思い出だ。
「ファーレン殿下、アルメリア様」
ユウヤ殿下とフレイアが東国の正装で声をかけてくる。
日本の着物と韓国の韓服を合わせたような衣装で、下は袴のような感じで殿下は黒地に麒麟が金糸と銀糸で刺繍されている。
フレイアは同じような形で白地に金糸と銀糸で殿下とお揃いの麒麟が刺繍されている。
東国の皇帝は金の龍が両手に宝珠を持っていて、皇太子は銀の龍が片手に宝珠を持っている物を身につけるという。
皇帝の兄弟は霊獣を身につけられるといわれていて、ユウヤ様は麒麟を身につけることになっているのだ。
ルノアの王印と似たような感じだが、東国は神話や霊獣などの信仰を大切にされているのだろう。
「この度は御婚約おめでとうございます」
「ありがとう」
「アメリー、婚約おめでとう!とっても綺麗よ!!」
フレイアがギュッと抱きついてきて、自分のことのように喜んでくれる。
「ありがとうフレイア!フレイアも、東国の正装、すごく神秘的で素敵!!」
私もギュッとフレイアを抱きしめた。




