魔力の解放と輝き
中ほどにある神殿裏口の前に待機する。
妖精の動きはよく覚えているが天使役は一生に一度だけなので初めての大役。
リハーサルでしっかり確認をして覚えたけど、心配だよ~大丈夫かな?
ドキドキしている私の手をそっと握ってレンが深呼吸をするよう、耳元でささやいてくれる。
その声に反対にドキドキしてしまい、違った意味で緊張がほぐれる。
にっこり微笑んでくれるレンだったが、私の後ろに目をやり心底イヤな顔をする。
「上で待っていればいいのに。それにいじめですか同じ服着てくるって」
振り返ると、二人の神がくすくす笑いながら立っていた。
本当だ!私たちと同じ服装にしてきている!
『せっかくだからお揃い。でも若い二人はいいわね~新婚さんみたいで初々しくて羨ましいわ』
『フィーもまだまだ若くて綺麗だよ』
何百年一緒にいるんでしたっけ?
惚気あって額にキスなんてしているこの二人がこの国の神様なのだから、ルノアって平和だな~
こういうのがバカップルというのか・・・
自分たちがやっているときには気づかないものであるが、他人がイチャイチャしているのを見るってこんな感じなんだ。
気をつけよう。
『では先に上で待っているからね』
女神が言うと二人はふっと消えてしまった。
「本当にいたんだって再認識した。この間のことは夢だったのかな~って思いたかったな」
「階段の上できっと満面の笑みで待っているから、楽しみにしていなよ」
私は気づいてなかったけど、ずっと経験してきたレンの心労は計り知れないと思う。
労いを込めて頬にキスをすると、もっとしてと抱きしめられてしまった。
ここに誰もいなくてよかった・・・
私たちの入場が始まる。
レンの後ろに続き、神殿内に入り階段下の中央に立ち、後方の扉から入場する妖精役のエリシオン殿下とサラ様を待つ。
二人はピンクと水色の色違いの衣装で、特にサラ様のピンクの衣装は切り替えなどの作りが美しく、歩くたびにふわふわ動くように設計されているのが分かる。
私たちの前に来た二人から渡された花束は、真っ白なバラを中心に周りを色とりどりのカスミソウが配置された素敵なものだった。
花束をレンが受け取り、その手に自分の手を添え二人で階段を上る。
上では女神役の母様と神殿長の父様、国王夫妻と・・・二人の神が待っていた。
(本当だ、凄く嬉しそう)
神様二人はこの日を楽しみにしているのだろう。
とても素敵な笑顔で、こちらを見ている。
母様にレンが花束を渡し、私たちは跪き母様によって王華に花束が捧げられる。
口上と共に肩に暖か魔力を感じそっと目を開く。
うつむいたままで顔は見えないが、神がお互いの魔力継承者の肩に触れているのを感じる。
ぎゅっとレンが手を繋いでくれるのと同時に、体の中の魔力が外に引っ張られるような感じがして、ふわ~っと私の長い髪が風にあおられるように舞い上がり、レンの髪も舞い上がっていた。
大きな魔力の波が溢れ、女神と同調しながら王華に注がれていくのを感じ目を開ける。
王華は私たちの魔力を吸収し、今まで見たことが無いほどの輝きをたくわえてから、金色と銀色の魔力を大量に吐き出し、空間が2色に染まる。
「こんな光今まで見たことない・・・これが魔力の解放?!神との同調?!」
各国の要人や貴族の参列者の方々も初めての光景に驚いている。
そして金色の光の粉を纏ったように輝くレンが私の手を取り立ち上がる。
そこで自分も同じように銀色の光の粉に囲まれ輝いていることに気付く。
神気を含む魔力を全部吐き出すと、私たちの周りの光は粒となって消え、舞い上がっていた髪も戻り背中に落ち着いた。
わー!!!
という歓声が神殿内だけでなく外からも湧き上がり、遠くからの声もここまで響いてくるようだった。
これから後、ルノアの花祭りでは光の祝福が受けられると話題になり、人が押し寄せることになる。
そして私たちは神の生まれ変わり、再来と国内を大いに盛り上げることとなり、人々に祭り上げられてしまうのだが、今は自分達でも大量の魔力に驚きと心地よさを感じ、握りしめた手の感触を幸せに感じていた。




