花祭りの衣装に着替えたら
花祭りが始まった。
今日は祭りの開催を告げる神殿行事。
天使の衣装は完璧で、さすが人気のデザイナーと王妃様が手がけたことだけある。
衣装を身に着けると、侍女の皆さんが本当に素敵です!綺麗です!こんなお美しい天使様見たことありません、など世辞が飛びかう。
確かに王妃様の目は確かだと改めて感じる。
上から着るワンピースタイプの物は、衣装合わせより少し長めになるよう薄い金の布が足されていて、スリット部分には網目のレースが足され、際どさが無くなっていた。
透け素材は変わらないが、金の刺繍の配置が素晴らしく美しさを際立っている。
衣装合わせの時は透け感、生足など心配されたが、程よい色気といい感じに清楚感が出ていてビックリする。
似合っているとは思う、けどそんなみんなが大絶賛するほどでは無いと思うのだが?!
今回は神殿での一室で着付けとなり、そのままここで待っているよう指示がされている。
レンは王城で陛下の代わりに急な来客をご案内してから急いで駆けつけることになっている。
俺は男だからどこでも着替えられる。
と言っていたが、下手したら本当に馬車での着替えになってしまいそうなくらいギリギリのようだ。
一人は嫌だなぁと、シュンとして紅茶を飲んでいるとミーナが、大丈夫ですよ。と声をかけてくれる。
そうだね、レンだから間に合うよね。
あと1時間で私たちも神殿口まで行かなければいけない頃、なんとかレンが間に合う。
細身の白いスーツで、上着は腰から下の切り替えが透ける素材になっていて下のパンツが見える形になっている。
また、金の蔦の刺繍が私と同じように腕を這うようにされ、上着の透けているところにも私の裾と同じような刺繍が入っている。
今までは色違いのペアだったが、今回は本当に同じデザインで作られている。
完璧なお揃いは、なんだかすごく恥ずかしい。
「リア、すごく綺麗。俺の天使はなんでこんなに綺麗なんだろう・・・でも、絶対母上の嫌がらせだ。なんでそこにこの生地を使う!腕を見せる必要ない!それにこれなんだよ!リアの足をこんな風にみんなに見せるなんて、嫌だ!!無理、やめよう!城に帰ろう!見るのは俺だけ!!」
レンさん完全に壊れた。
はい、レン落ち着こうね息吸って、吐いて・・・そして諦めよう。
わ、本当に泣いてるんじゃないの?!泣いてないか。
ヨシヨシと頭を撫でてあげる。
「やめられないことなんて分かってる。でも絶対母上の陰謀だ。嫌がらせだ。だから衣装の仮縫いを別々にしたんだ」
ブツブツ言いながら自分で気持ちの整理をつけている。
レン頑張れ!あと少しだ!!
そして、はぁと大きな息を吐いて、レンが諦めの表情を浮かべた。
「我慢する、我慢するから、リア俺にこれつけて」
レンが私に小箱を差し出してくる。
あっ、これは・・・
昨年レンにあげたラペルピンだ。
「持ってきてくれたんだ」
「うん、金色だからつけても大丈夫でしょ。これで俺はリアのもの。リアも俺のものでしょ?」
私の左手をとり、指輪を見つめて笑う。
うん、そうだね私はあなたのもので、あなたは私のもの。
いつの間にかソファに座りミーナの入れた紅茶を飲んでいたジンさんが、泣いたり笑ったり忙しいバカップルだなと呆れて言うが、レンが羨ましいだろうと見せつけるように私を抱きしめた。
でも、私は知っているんだ。
そんなジンさんが密かにミーナを想っていることを。
ミーナも少なからず、ジンさんに好意的な感情を持っていることを。
早くバカップルになってしまえ!と思っていることは、まだレンにも内緒だけどね。
レンにラペルピンをつけ、シャツの第一ボタンを閉めタイを直す。
私より完璧に着こなしているレンは本当にかっこいい。
私も負けないよう、姿勢を正す。
「さぁ、今年はどんな花祭りになるかな?リア、俺の手をしっかり握っててね。あの人たちの魔力に引き摺られないよう自分をしっかり意識してね」
「うん!頑張る!!」
「でもその前に、花祭りおめでとう。愛してるよリア」
優しくキスをしてくれる。
唇が離れるのが、なんだか少し淋しい気持ちになるけど、繋いだ手をギュッと握り私も、
「花祭りおめでとう、レン。私も愛してるわ」
心からあなたに伝えたいと思った。




