女神の特訓
女神教官のスパルタはなかなかのものだった。
途中レンが少しだけ手を貸してくれ、魔力の受け渡しのやり方もコツが掴めた。
昼過ぎから始まった訓練は日が傾くまで続きなんとかものにすることができるようになった。
レンもコウ様も短時間でできるようになった私に驚き、凄いと褒めてくれ、コウ様に至っては頭をたくさん撫でてくれ、アルメリアは素直で可愛いね!!と褒め殺しのようで恥ずかしかった。
ついでにお疲れ様と光の魔力をくれようとしたのだが、神といえども俺以外の男の魔力なんか言語道断!とレンによって引っ剥がされてしまう。
『レンはもう少し心を広く持つ練習が必要かな?』なんて言われてしまうが、ほっといてくださいとレンは知らんぷりを決め込んでいる。
『アルメリア』
『はい、フィー様』
『花祭りの式典では私と一緒に力を解放してね。私の役目は一年に一度、民に癒しを届けること。段々年を重ねるうちに私の力も弱くなってきている、だからあなたが生まれたのだろう。今年は素敵な花祭りにしましょうね!』
「はい!!」
レンの手を握り、素敵な花祭りにできるよう頑張ろうと思った。
さて、私の特訓の様子を離れたとこから見ていたミーナは、神様が見えないことで私が一人芝居をしているようにしか見えず、お嬢様が壊れた!と大慌てだったそうだが、レンのそばでずっと見守ってきたジンさんは、とうとう認識されたんだね〜大丈夫、大丈夫と今が一番安全だよ〜と、マジ寝の昼寝をしていたらしい。
お嬢様が戻った!と普段の彼女からは想像できないほどよかった〜と抱きしめてくれた。
確かに変だよね。
人目があるところでは気をつけよう。
でもミーナには慣れてもらわなきゃいけないから、今あったことを全部話し、理解を求めた。
ジンさんに説明されていたみたいだけど、俄には信じられないがお嬢様がおっしゃることは信じます!と言ってくれる。
おいおいオレ教えましたよね、とジンさんが肩を落としていた。
私たちのそんなやりとりを微笑ましく見ていた2人の神様は、日がなくなる前に『じゃあ、花祭りでね!』と言って空気に溶けるように消えていった。
「ねぇ、レン」
「ん?」
「こんな風にあの神様たちは急に現れて、また急に消えるの?」
「そう、だから神は勝手で面倒臭いの」
凄く実感がこもっている。
これから私もこの二人に振り回されることになるのだが、まだこの時はそんな未来を想像できなかった。
帰りの馬車に乗って、二人で並んで手を繋ぎ楽しかったねと話して、左手の薬指の指輪を押し花にしなきゃなぁ〜と考えていたあたりから・・・記憶がない。
女神の特訓で疲労困憊の私と、徹夜二日に加えて私の特訓をハラハラしながら見ていたことによる心身共に疲れきったレンは、馬車が走り出すとすぐに眠ってしまったのだ。
お互い寄りかかるように身を寄せ、二人とも爆睡。
王城についても目が覚めることはなく、気配に聡いジンさんとミーナの気配りによって、そのまま馬車の中でしばらく寝かさせてもらったのだった。
そしてもちろん先に目を覚ましたレンに姫抱っこされ部屋に運んでもらった私は、次の日の朝ベットで目を覚まして己の失態を悔いるのだった。
二日徹夜の人に運ばせてしまった。
不覚・・・




