式典リハーサル
今日はこれから大神殿で花祭りの式典のリハーサルが行われる。
裾が長くてフワッと広がるタイプの白いワンピースを着て式典用のヒールの高い靴を履く。
ミーナが両脇の髪をハーフアップにまとめ、フリージアの生花の髪飾を飾り、レンからもらったエメラルドのネックレスをつけた。
鏡の前で最後のチェックをすると、ミーナがとてもお似合いですと微笑んでくれる。
支度が終わったので、城の王族区画専用の玄関ホールに降りて行く。
そこには先に支度を終えたレンが待っていた。
レンはスッキリとした細身の白いスーツがとても似合い、髪型もスーツに合わせ少し後ろに流している。
胸ポケットには私の髪飾りとお揃いのフリージアをさしている。
カッコいい〜!!
何でもそつなく着こなし、嫌味がなく自分の色気を無意識に上手く出せる人なんて羨ましすぎる。
毎回思うけど、この人の隣に立つ私・・・
私もこの世界の美人の部類には入るとは思うけど、生まれ持った品格に所作が美しいうえに、完璧な作りのイケメン。
これで本番当日、色気たっぷりの衣装を着たらどうなってしまうんだろう。
今からドキドキの心臓が持つか心配だわ。
全くもって無敵の王太子には敵う気がしない。
私に気がついたレンが嬉しそうに笑い、とっても可愛い!似合ってるよ!と褒めてくれた。
本当はギューってしたい!頭なでなでしたい!オーラが出てるけど、着崩さないよう我慢してくれているのがわかって、思わず吹き出してしまう。
私にバレているのがわかって恥ずかしいのか、一つ咳払いすると左手をスッとさし出すので、私は右手の指先を彼の手の平にのせる。
「では、俺の天使。神殿までエスコートさせていただきます」
「よろしくお願いします。私の天使様」
二人でくすくす笑って馬車に乗った。
そんな無敵の王太子でも絶対に敵わないと思っている相手が、彼の唯一のただ一人の婚約者様だということに、彼女は全く気づいていないのだ。
今年の妖精はエリシオン殿下が行う。
本当はもうニ年前からエリシオン殿下に妖精役を代わる予定でいたのだが、この王子もルノア王族としての執着がとても強く、好きな人とじゃなきゃやらない!と言うので、私たちが五年も妖精をやることになったのだ。
やっと昨年お相手のサラ様を口説き落とすことができ、今年は二人で臨まれることとなった。
王妃様はそれはそれは喜ばれ、お二人の妖精の衣装を半年も前から準備、六年目の私たちより力の入れ方が違うのが見ていてわかる。
二つ考えるの疲れて、私のはお色気に走ったのか?!
そんなわけないか。
さて、私たちも今回初めての天使役。
昨年まで妖精役として式典内で見てきたから、天使役の動きはなんとなくわかってはいるけれどもちょっとした動きなど知らないこともあるので、一つ一つ確認することができた。
そして1番の難関は、花束を持ってヒールの高い靴を履いて登る階段だった。
何度も登って降りてを繰り返すが、片手はスカートの裾を持ち、もう一方の片手は花束をレンと一緒に持つ。
ちょっと難しいかもしれない。
私の練習にレンは嫌な顔一つせず付き合ってくれ、難しいようならレンが花束を一人で持った手に、私が手を添えて一緒に登ってはどうかと案も出してくれる。
式典側としてはそれでも構わないというので、そうさせてもらうことにする。
レン言わく、今まで結構みんなそうやっていたらしい。
私、今まで気づいてなかったけど、よく見ているなぁ〜と感心してしまう。
そして流しての最終リハーサル。
エリシオン殿下とサラ様から花束を受け取った私たちは、階段を上まで登り女神のお母様に花束を渡してその場で跪き祈りを捧げる。
祈りを捧げていると体の中の魔力が引き出されそうになって驚く。
なんとか堪えて、顔を上げると王華のカサブランカが目に入る。
なんだか目が離せなくなるような気がするのと王華に引きずられるように、ちょっと魔力が疼くような感覚がする。
なんだろう、変な感じだ。
「リア!!」
レンの声と右手を引かれたことで、王華から目を離すことができた。
大丈夫か?と小さく聞かれて、今がリハーサル中だったことを思い出す。
ごめん大丈夫と小声で伝えると、それならよかったと言うホッとした声がする。
『本番気をつけてね。《私》に引きずられないようにね』
「えっ?!」
今誰かに声をかけられたような気がするけど、まさか・・・ね。
レンを見るとなんだか難しい顔をして、王華を睨みつけていた。




