学園復帰と進級と
事故後学園を休学した私は、復帰試験を無事にクリアして半年で戻ることができた。
クラスの皆様も喜んで迎えてくれ、特にメアリアンが喜んでくれた。
私が王城で療養している時に、何度もお見舞いに来てくれ親交を深めた私たちは、メアリン、アメリンと呼び合うほどの仲になっていた。
メアリンのおかげで授業の進行状況が分かり、復帰試験対策が出来てとても助かった。
そんな私たちの仲良しっぷりをジュローム様がちょっぴり羨ましがっているのが分かり、メアリンと呼ぶと反応するのが可笑しくてついついいつも以上に呼んでしまって、レンにジュロームで遊ぶなと注意されることもあった。
そして私たちは二学年に進級した。
レンは一学年の時から生徒会の副会長をしている。
二学年の秋からは生徒会長になれるよう頑張っているのだが、これから人の上に立つための予行練習なのだと言っている。
ジュローム様は副会長補佐兼会計を担当されている。
彼もレンの治世を補佐することを目標にしているので、こちらも予行練習といったところだろう。
私はのんびりがいいので、誘われたけどお断りをし生徒会活動がある日はメアリンとお茶をしたり、一人の時は図書館でレンが終わるのを待つようにしている。
二学年に進級しても私は王城で暮らしている。
私は無意識に癒しの魔力を薄く放出してしまうようで、そのコントロールを大賢者様に教わっているが、中々身に付かず大きなため息を吐かれてしまっている。
また、魔力が安定していないためレンの近くにいることが必須とのことだった。
お父様は渋々許して下さり、レンの時間がある時に自宅の屋敷に帰るようにしている。
ウタは一緒に王城で暮らすと最後まで言ってくれたが、妊娠がわかった時に屋敷に戻した。
帰らないと泣いていたが、私もウタが大切なことを伝え二人で泣きながら別れを惜しんだ。
ウタは安定期に入ると週に三度は王城に来ていたが、臨月に入り自宅で出産に備えている。
もうすぐ可愛い赤ちゃんに会えることを私も楽しみにしている。
今日はサロンでこれから夏に向けた新しいフルーツアイスティーを試飲してほしいと、学園の紅茶マイスターのシャロンさんに誘われて、サロンでレンを待つことにする。
「これ、スッキリして美味しいですわ!」
「本当ですか!でも、このスッキリな味わいに後もうひとつ何かないかなぁと思うんですよね」
そうですわね・・・何かこのアイスティーにあうものは?!
「あの、シャロンさん。このフルーツは生ですか?」
「はい。そうですが?」
「では、凍らせてみてはいかがでしょうか。フルーツが氷代わりになって氷だけよりは紅茶も薄まりません。それとフルーツも楽しめるように口が大きなグラスに、フルーツを少し多めに入れるといいと思います。またグラスのふちにハイビスカスなど南国の花を飾ったらいかがでしょう。夏らしくて素敵だと思うのですが?紅茶だけで無く、ハーブティーやハイビスカスティーもいいんじゃないですか?!」
「アルメリア様!すごく素敵な気がします!!早速フルーツを凍らせて、何が合うか試してみますね。試作品が出来ましたら、また試飲をお願いします!!」
ペコペコ頭を下げ大喜びのシャロンさん。
素敵な夏のフルーツティーができるといいなぁと思った。
そのままアイスティーを頂きながら本を読んでレンを待つことにすると、シャロンさんがこれも試作なんですがと言って胡桃のマカロンをサービスしてくれた。
今日は生徒会の会議が長いみたいで、サロンの閉まる時間になってもレンの迎えがないので、玄関の方に移って待つことにする。
玄関ホールには運動活動や文化活動を終えた皆様方が帰宅するためにたくさん通られていた。
あ、まずい。ここはダメだ・・・
運動活動でちょっとした怪我をされた方や、うまく出来なくて心が疲れてしまった方などがいらっしゃって、癒しを求める人が多くて魔力がうまく抑えられない。
いつもはレンが一緒だから、守りの魔力で守ってくれていたから平気だったのだろう、レン様様である。
うー、頭痛い。
これだから大賢者様に怒られてしまうんですよね。
まだまだ未熟な自分を叱咤するが、頭が痛くて壁に手をつき体を支える。
レンまだかな?!早く来ないかな・・・
「カサヴァーノ様どうかしましたか?御気分でも悪いですか?」
同じクラスの男の子が声をかけてくれる。
確かラシール侯爵家の嫡男タカク様といったはず。
「ありがとうございます。レン様がもうすぐいらっしゃると思いますので、大丈夫です」
でもよほどひどい顔をしていたのだろう、優しさから近くのベンチまで体を支えて連れて行ってくれたが、これはレンに見られたら怒られてしまう!
「ラシール様ありがとうございます。すぐにレン様が参りますからここで大丈夫です。」
「しかし」
「本当に大丈夫ですから、ほら迎えの馬車がいらしているんではないですか?!」
でも、しかしと言っていたがこれだけ喋れるなら大丈夫と思ってくれたようで、じゃあまた明日、と言って帰って下さった。
レンが来る前でよかったよ・・・
急に椅子の脇に人影を感じたので釘を刺しておく。
「ジンさんレンには今のこと内緒ですからね」
「姫様が殿下にバレないとか思っているところがおかしくて笑いが、くくく・・・俺は言わないけど、バレる方に全財産賭けてもいいぜ」
「私もそう思うので賭けにはなりませんよね」
だよな!と、笑いが止まらなくなってしまったジンさんには外で思う存分笑ってきてもらうようお願いした。
「いやいや離れたら俺も何されるか分からないから無理。笑いはおさまったからいいけど、姫様そろそろ俺を敬称づけで呼ぶのはやめて下さい。俺は殿下と姫様に仕える者ですから」
わかっているのですが、ジンさんはやはりジンさんなので・・・
結婚までに慣れますという私に、よろしくお願いしますねと言うと、殿下がいらしたので、俺はこれで・・・頑張れよ!なんて言って姿を隠した。
園舎の方を見ると慌てた表情で駆けてくるレンがが見えた。
「リア大丈夫?リアの魔力の乱れを感じたから、後は先輩方とジュロームに任せてきたけど、遅くなって・・・・・・」
周りと遮断するような光を感じ、あれほど痛かった頭の痛みがすっと消えていく。
レンの守りの魔力を感じてほっとしたのもつかの間、レンの優しかった雰囲気が一変し獲物を捕らえる猛禽類のような凄みを感じ、自分の身の危険を感じて震えてしまう。
「ねぇ、リア。誰と一緒にいたの?!」
「だ、誰とも。あ!サロンでシャロンさんにアイスティーの試飲を頼まれてサロンにいたよ」
「ふ~ん。そんな嘘ついて俺が気づかないとでも思ってるの?」
「思いません・・・」
小さく答えると、座っている私を抱き上げて歩き出す。
私は驚き、声にならない悲鳴を上げてしまう!
皆さんが帰る中、姫抱こはかなり恥ずかしいんです!
「違う男の臭いさせて、すげぇむかつくんだけど!」
え!匂い?あれだけで匂いがついちゃったの?!
「レン!違うから、特に何もないし誤解だから!!」
「リア舌噛むといけないから話はあとでね」
ひ~~!怖い!!怖すぎる!!笑っているのに目が全く笑ってない。
黒いオーラを感じて小さくなって震えてしまう私は、周りから見たらかなり具合が悪そうに見えたようで、次の日皆様に心配されることになるのだ。
その後、馬車の中では私の言い訳とレンの絶対零度の微笑みと、リアは悪い子だねとお仕置きをされ、王城につくときには心身ともに疲れてしまい、レンに姫抱っこで部屋まで連れて行ってもらうことになるのだった。
そしてわざと私の様子を見に現れたジンさんに大爆笑されるのだった。
次章再開しました。
あれから1年後の花祭りのお話になります。




