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前世の心残りを今伝えたい(レン視点)

俺の腕の中で、リアは本当に嬉しそうに幸せそうな微笑みを浮かべ眠ってしまった。

喜んでくれてよかった。

ギリギリまで気を張って頑張っていたのだろう、気絶するように眠ってしまうのは久しぶりだ。

朝から微熱があったのに、少し無理をさせてしまったかもしれない。

心配するメアリアンに大丈夫だよと伝える。


「ユウヤ王子、フレイア嬢は今回の件でルノアからの国外追放の処分になっているから東国に連れて行ってくれてかまわないが、花祭りのときはこっそりお忍びで入国しろよ。リアが待っているから、そこは目をつぶる」


「東国としてはフレイアは今までどおり騎士団長グレゴールの娘として生きていきます。そして特に祭りごとに関わらない第三王子の妻にします。今度こちらに訪れるときは、フレイア・ダイレンとして入国しますので、大丈夫です。フレイア・バーミンガムはこの先一生この国には来ませんので、ご安心ください」


フレイアの祖父であるバーミンガム男爵は、東国に駆け落ちした娘の子どもの髪の色がピンクのチェリーブロンドと知ると、誘拐まがいにフレイアをルノアに連れてきて、俺やエリシオンの相手に育て上げようとしたという。

ルノアにはピンクの髪の子どもは、女神の愛し子といわれ天使の力を持つと実しやかに言われている。

孫の髪の色を知り欲が出てしまったのだろう。

今回のことで、バーミンガム男爵家は取り潰し、領土は今のところ王国が管理することになった。

またヤロン侯爵家は次男をさっさと廃嫡したが、バカ息子の責任を免れるわけはなく、侯爵から伯爵の末席まで降爵することになり、領土も半分没収となった。

バカ次男の兄は出来る男なので、頑張ってくれることと信じている。

それと許しがたきバカ次男はルノアの辺境地にある鉱石採掘場での重労働を一生課せられることとなった。

全ての決着はついたが、優しいリアが自分にされたことよりも相手のことを悲しむことが許せないので、リアには教えるつもりはない。

リアを抱き上げ、席を立つことで今日のランチ会は終わりとなった。



リアを俺の部屋の方のベットに寝かせ侍医を呼び診てもらう。

事故後家族以外の人と会うのが初めてなのと、気持ちの高揚などで疲れが出てしまったのだろうと言うことだった。

また大賢者にも来てもらいリアの魔力の様子を見てもらうと、魔力が安定していないことで発熱したのだろうということだった。

今晩は熱が上がる恐れもあるので、朝まで一緒に過ごし魔力を安定させるようにと言われた。

また明日の朝様子を見ましょうと言い、大賢者は部屋を出ていった。


今日は急を要する仕事は残っていないが、昼寝をする気にはなれず従者に執務室にある書類や読みかけの本などをベットサイドに用意してもらうよう指示し、リアの横に並んで座る。

枕などで座りやすくしてからリアの右手を取り手をつなぎ、目を閉じてお互いの内にある魔力を感じながら、相手に魔力を流すようなイメージをすると、俺の中の魔力がリアに流れリアの魔力が俺に流れてくるような気がした。

熱いなぁ。

手から伝わる熱と無意識に俺に擦り寄ってきた肌の体温を感じ、眉を顰めた。



夕方の光が部屋を満たす。

俺は読みかけの本を読んでいると、握っていた手がわずかに動いたことでリアの覚醒に気付く。

夕日のオレンジを霞がかった寝ぼけた金の瞳が映し出し、きれいだな~と見つめていると、まだ眠そうな表情が、俺を捉えふわっと花が咲くような微笑みを見せる。

いったい何度俺を魅了すればいいんだと心の中で白旗を挙げたい気分だ。


「レン・・・ここお部屋。ごめんね、皆さんお見送りしないで・・・」


まだ眠そうに眼を擦りながら、謝るのでみんな分かっているから大丈夫だよと声をかけ、目元が赤くなるから、もう擦るなと手でそっと抑える。

なんだかリアがさっきとはまた違ったように喜んでいるのを感じるが、何にそんなに喜んでいるのか不思議に思う。


「レンと二人っきり久しぶり」


「部屋の扉開いているし、廊下には誰かいるぞ」


うん、でも中々二人だけになれなくて寂しかった~なんて、言われると俺も顔がにやけてしまう。

リアが、私ずっと伝えたかったことがあったんだけど聞いてくれる?と言って体を起こそうとするので、脇に手を入れ抱き起こす。


「ありがとう」


はにかむような微笑みとなんだか恥ずかしそうにしているリアは、ちょっといつもと違うような気がする。


「あのね、結城先輩に聞いてほしいことがあったの」


ドクンと心臓が音を立てたような気がした。

懐かしい呼び方、響き、リアの中にいるもう一人の莉愛の影を俺の中にいるもう一人のオレが感じて歓喜しているのが分かる。


「なぁに立花さん」


するっと名前が出てくる。

そうだった、俺はまだ莉愛とは呼べず立花さんと彼女のことを呼んでいた。

わぁその言い方懐かしい、なんて言いながら莉愛はオレをじっと見つめて目元を赤く染める。


「結城蓮さん。私あなたのことが大好きでした。本当はあの日、告白しようって決めてたのに言えなくて、前世の心残りだった。あなたがレンだって分かっても、レンと先輩は一緒なんだけど、でも違うの。莉愛わたしが告白したかった人は、あなたの中にいる先輩なんだって今なら分かる」


今、目の前にいるのはリアなのに莉愛がいるように感じる。

莉愛はリアのように絶世の美少女なんかではなかったけど、笑顔がとても可愛い女の子で、目が離せなくなり海外営業部では、オレがどこにいても彼女を見つけるので、オレの想いはバレバレだった。


「あの日、オレも立花さんに告白するつもりだったんだ。ずっと好きでした。受付で『おかえりなさい』って言われて微笑まれるたびに、結婚して家に帰ると大好きな莉愛がいてなんて妄想してた。あの日、一緒に帰る約束をしてたのに遅れてしまったオレがエレベーターから降りると、玄関で待っていた君がオレに気づいて笑ってくれるのを見た時に、あぁ一生手放せないって思ったんだ。まさか、そこから執着していたとは、今気づいたことだけど、自分でもドン引きだわ」


くすくす笑う莉愛リア

どちらもオレにとってかけがえのない大切なひと

そっと抱きしめる。


「もっと早く告白していたらよかったなぁ。前世のヘタレな自分を殴りたい気分だよ」


「でも、今とっても幸せ。一緒にいられて、すごく嬉しいの。それにまた来世でも私のこと好きになってくれるんでしょ。またあなたを好きになれるなんて凄いことじゃない!!」


大輪の花が咲くような笑顔が眩しい。

そして前世の心残りはなくなったって言いながら、俺の胸にそっと擦り寄ってくるのはリアの癖だ。

もう莉愛の影を重ねたり思い出すことは少なくなっていくと思う。

でも、もうそれでいいんだ、だって俺の目の前にいはリアがいるのだから。


「愛してる、リア」


「私も愛してる、レン」


唇を重ねて、俺の想いや愛しさを伝えた。


俺たちの記憶の彼方で今と同じように莉愛の右手を握ったオレが幸せに笑っているような気がした。





やっとここまできました。

次話でリアのお話は一旦エピローグとなります。

伏線回収できてない部分がいくつかありますが、レン視点も書きたいのでそちらで回収できたらと思っています。

あと一話、読んでいただけたら嬉しいです。


誤字脱字の発見ありがとうございます。

思ってもいない字で笑ってしまうこともありますが、とてもありがたいです。

今後もよろしくお願いいたします。

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