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再会とゆびきりげんまん

すこしずつベットで過ごす時間が短くなり、日常に近い生活が過ごせるようになってきた。

しばらくはまだレンの傍にいたほうが良いと侍医に診断されているので、私は王城の自分の部屋で寝起きをし日中は王太子の執務室のフカフカのソファで、レンのお仕事の邪魔をしないように本を読んだり刺繍をしたり眠って過ごしている。


今日はお天気がよくレンのお仕事がある程度落ち着いたようで、レンから中庭の東屋でランチを食べたり、午後はそこでのんびりしようと誘われる。

行く!と喜ぶと、午前中はお仕事するから待っていてねと額にキスをされた。


久しぶりにたくさんのお花が見れるなぁ、お外行くの楽しみだなぁと子どものようにワクワクしていたのだが、朝からちょっと微熱があったのを内緒にしていたのがバレてしまった。


「大丈夫だよ。熱っていっても微熱だもん。大人しくしてるから・・・」


「んーでも外はなぁ、でも今日しかないしなぁ。うーん・・・」


レンはどうするかなぁ?と考えている。

今日しかないって何?

多分何か用事もあったのだろうけど、中庭に面したサロンならとお許しが出る。

外はまた今度、と言われてしまうが、中庭のサロンはブルーを基調とした落ち着いた雰囲気でとても素敵なところで、お庭の眺めも最高に作られているのが分かる。


「ただし、約束がある」


「約束・・・?」


すごく真面目な顔で、私の目線に合わせて言う。


「絶対に無理をしないこと。熱が上がったらすぐ部屋に戻ること。体調が悪いとか何か感じたらすぐに俺に言うこと。これが約束だ」


「分かった、約束する」


小指が目の前に出されるので私もその小指に自分の小指を絡ませ、この世界には無い約束のおまじないを二人でした。



普通より少しゆっくりなら歩いて移動できるようになった。

まだ激しい運動や小走りも厳禁!と厳しくお達しが出ている。

早く学園に行きたいな~、メアリアン様と女子会したいな~と思っていると、サロンの入り口に幻を見たかと思った。


「アルメリア様!!」


幻ではなく大きな瞳からボロボロ涙を流したメアリアン様が待っていてくれた。


「メアリアン様!」


私の両手を取り「ごめんなさい」と何度も何度も誤ってくれるが、私は謝られるようなことをされた覚えがないことを伝えるとわんわん泣いて抱き着いてきた。

倒れる!と思ったがレンに支えられるのと、べりっと言う感じにジュローム様が引きはがしてくれるのが同時で、倒れずに済んだ。


「ダメでしょ。アルメリア様はまだ本調子ではないんだから、負荷をかけちゃダメ!」


「だって、ジュジュ・・・」


あら?愛称呼びだなんて、二人の関係も進んだのかしら?

ふふふ、学園に行っていたときみたいで、とても楽しい!


私の楽しい雰囲気を目を細めて見つめていたレンが、私を立て抱きに抱き上げソファに降ろし、私の右隣の定位置に自分も座る。

向かいにメアリアン様とジュローム様が座るが、まだあと席が二人分ある。

レンを見て誰が来るのか目で聞くと、お楽しみという感じに笑い、入口の方を見るので私もそちらを見ると、ピンクブロンドに赤い瞳の美少女と黒髪に胡桃色の瞳のイケメンが入室してきた。

あ!よかった・・・ずっと気になっていたけど、聞くに聞けなかったけど、ちゃんと会うことが出来たんだね。


「フレイア様・・・」


メアリアンが一瞬息をのむ気配を感じるが、私はフレイアに微笑みかけると、赤い瞳に大粒の涙をためて私のもとに突進してくる。


「ごめんなさい!!」


フレイアは私の目の前で止まると、頭が地面につくのではないかと思うほど頭を下げて謝った。

びっくりしてレンを見ると、謝っているよ、どうするの?と目がちょっと意地悪気に笑っている。

そんなの答えは一つしかない。


「お顔をお上げください。よかったです。ユウヤ様とお会いできたんですね」


「アルメリア様本当にごめんなさい。どう謝っても許してもらえるか分からないけど、あなたのおかげで私はユウヤに会うことが出来た。ごめんなさい、そしてありがとう。感謝してもしきれないわ」


横にユウヤ様が並び一緒に頭を下げる。


「ファーレン殿下、アルメリア様。この度はフレイアに会わせていただきありがとうございます。なんとお礼を言っていいかわからないほど感謝をしています」


「ユウヤ様よかったですね」


二人に席を勧めみんなでランチを楽しむ。

初めはぎくしゃくしていたメアリアン様とフレイアだったけど、少しずつわだかまりが解けていき、会話が弾むときがあった。

私にしては久しぶりというくらいたくさん食べた(一般的な半分量でもかなり頑張った!)

その後私の座っているソファに女子三人で座り、女子会のように話を楽しむ。

大きなクッションによりかかり、美味しい紅茶を飲みながらフレイアとユウヤ様のなれそめ等を聞く。


「もともと東国に住んでいらしたんですか?」


「ええ、私の父と母は東国に住んでいます。半分誘拐のように母の実家の祖父に引き取られて3年前にこちらに来ました」


フレイアのお父様は東国の騎士団の団長さんで、ユウヤ様のお父様の現国王の昔からの知り合いだそうで、フレイアとユウヤ様は幼馴染だという。

ユウヤ様は第三王子なので、特に婚約者もおらず好きな人と一緒になってほしいという国王陛下の配慮で二人は順調に愛を育みフレイアはプロポーズもされ、あの琥珀のネックレスをもらったそうだ。


ユウヤ様とフレイアは明日東国に帰るという。

これが今日しかダメな理由だったんだなぁと思う。

せっかく仲良くなったのに、もう会えなくなるのが本当に寂しい。

するとユウヤ様が


「来年の花祭りにまた来ます」


と言ってくれた。

今度はみんなで楽しいお祭りになるといいねと言い、私は小指の約束を教えることにした。

指を絡めておまじないをする。


「ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼんの~ます ゆびきった」


フレイアに呪詛みたい・・・と言われて笑った。

昔のおまじないだよ!と、言うことにした。

いつからか、それが約束のおまじないとして民衆に広まり、小さな子供から大人まで指を絡ませ約束をするようになるとは思わなかった。


私たちの約束は破られることなく、毎年フレイアとユウヤ様は花祭りの時に遊びに来て一緒に過ごすようになる。

メアリアン様とジュローム様とも一緒にその時は友だちとして過ごした。

それは私たちの子どもたちが出会い、運命を共にするきっかけにつながっていくのだが、それはまた別のお話し。



本当に良かったとクッションに体を預けて目を閉じる。

嬉しいな~と思うのと同じくらいに眠くなってきた。

まずいな~疲れたみたい。


「リア、約束だからもうおしまいにしようね」


「うん。会わせてくれてありがとう」


急な睡魔に襲われ、レンの腕の中で目を閉じた。



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