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眠りと癒しと

私たちは起きて眠ってを繰り返し、事故から10日ほどたつ頃に、やっと起きている時間が少しだけ長くなってきた。

でも、まだ気を抜くとすぐに眠りに誘われてしまう。

体力を戻すために食べて、起きて、ウタと話をして、レンと手を繋いで廊下のソファまで散歩して、お互いの体力の無さに苦笑し、自分が思っている以上に体力を使ってしまい目を回して倒れて怒られるを繰り返しながら順調に体調を戻していった。


ただ、あの後から中々二人っきりになれない。

ベットに一緒に横になることは、お互いの回復になるそうで昼間は許されているが必ずウタやその他の侍女が傍で見守っているし、夜は別々の部屋で眠るので中々話が出来ない。


(レンと色々話がしたいのにできない・・・)


聞かれてはいけないような話もあるので、出来れば二人っきりがいいんだけど・・・



あれから一ヶ月ほどたった。


まだ二人で話をする機会が持てていない。


体力が少しずつ戻り、庭の東屋や温室まで行くことが出来るようになってきた。

初めは行くだけで疲れてしまい、用意されているフカフカのソファと大きなクッションと薄布に包まり、二人でお昼寝をしていた。

でも今はお日様のポカポカな陽気とレンのぬくもりで、私だけが寝てしまい、レンはその横でお仕事をすることが増えた。

レンの方が早く回復し、多分もう無理をしなければ普段に近い生活が送れると思われる。

実際一緒にいながら書類を見たり、ジュローム様が来て難しい話しをしているのを隣で聞いているうちに、瞼が重くなり寝てしまうことが多い。

それでもそばに居てくれるのは私の回復が遅い為なのだと、言われなくても分かっている。

癒やし手である私は基本、自分の事を癒すことが出来ない。

自分に魔力を使うことは大変難しく、相当のコントロールができるようにならないと出来ないらしい。

流石に今回は初めて魔力を使ったことで加減が出来なかったのと命の危機に自分への最低限度の癒しを無意識に使えたのだろう。

でも最低限度のため、傷を塞いでいるが死なない程度なので、内臓の損傷など見えないところはまだ治らず、あれだけの事故なので私の状態は重症に値するそうだ。

同じように重症とみられたレンだが、レンにはあの時に癒しの力が届いていたので、怪我は完全に回復していた。

レンの場合は魔力枯渇による機能不全のため、体を休めることで順調に回復できたのだろう。

私にとっては大変喜ばしいことだ。


そんな私だからレンは私の命が消えないように魂の共有を行い、私を助けようとしてくれたのだ。



まだベットに短い時間しか起きられない時に、陛下と王妃様、父様、母様がお見舞いにいらして下さった時に、魂の共有について話を聞いた。


「まったくお前の執着には呆れて物も言えない。魂の共有は相手の了承を得てから行うものだろう。今回は非常事態とはいえ、困った奴だ」


「本当よ!ファー君まだアルメリアちゃんと婚約(仮)なんだからね!」


「まだ(仮)なのかよ!」


ポンポンと会話が飛び交う親子だなぁと、まだそこまで元気のない私は三人の会話の様子を見守ることしかできなかった。

そして魂の共有について考える。

レンと魔力と魂を共有しても、私が使える魔力は『癒しの力』のみ。

今のように自分自身の魔力が枯渇した状態で癒しの力を使うとなると、自分の生命力を魔力に変換して使うことになる。

自分の生命力を使ってしまうということは、その先にあるのは死だ。

魂を繋げてしまえば、自分だけの命ではなくなってしまうので生命力を使うことに躊躇するようになるだろうし、無理をしない。

無理をさせないために、周りの非難を覚悟で魂まで繋げて私を守ろうとしてくれたのだ。

本当はみんなも分かっている。

でも、倫理的にも勝手にその人の一生を奪ってしまうような行動は本来許されない。

言葉では厳しいことを言っても、陛下から感じる声音は優しかった。


「アルメリアちゃん・・・また寝ちゃったのね」


王妃様の声がする・・・レンの肩に頭をのせいつの間にか瞳が閉じていたが、まだ意識はあった。

目を閉じているのでレンの表情は見えないけど、レンからは悲しさもどかしさ、いら立ちのような感情があふれていた。


「父上、俺は間違っていたのかな。どんなに魂を繋げても、俺の力ではリアを癒してあげられない・・・自分だけ体調が戻っていくのが悔しい」


「魂を繋げても、使える魔力はそのままだからな。お前が癒し手になれるわけではない。でも、魂の繋がりでお前から癒しの力が還元されアルメリアにも微量でも癒しの力が届くだろう。

簡単に許されるべき行為ではないと思うが、私がお前の立場になったとしても同じことをするとは思うよ」


「・・・」


ごめんね。

きっとずっと後悔させるんだろうな。

でも、私はまたあなたとこの世界でも一緒に最期を迎え、また来世でも一緒にいられるなんて、すごく嬉しいんだ。


ごめんね、ごめん。

そしてありがとう・・・


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