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魂の共有(ノア視点)

「ダメだ!リア!!」


ファー様の声に振り返ると、ファー様の手を振りほどき、アメリーが先ほど助けられた穴に飛び込む様子が目に入る。

何をやっているんだ、あのバカ!


離れたところで事故処理をしていたが、急いでアメリーを追うため先ほどの穴に向かうが、俺がつくより先にファー様がアメリーを追って中に飛び降りてしまう。

本当はこんな危ないところに王太子殿下を行かせることはまずいと分かっているのだが、ファー様アメリーのこととなると誰にも絶対譲らないからなぁ・・・

そんな風に考えていたが、後から自分が行けばよかったと悔やんでも悔やみきれないほど後悔することになるとは思っていなかった。


ドーン!と先ほど殿下とアメリーが飛び込んだ穴の中で爆発音がし、地面を揺らす。

まだ爆薬が残っていて、引火したのだろう。


「殿下!アメリー!!」


今すぐに穴に飛び込みたかったが、煙が酷く中の状態が全く見えず二次災害を考えると飛び込めない。

クソ!俺が行けばよかった・・・

煙が収まるのを今か今かと待っていると、煙を押し出すように銀の光が穴の底から湧き出てくる。

この銀の光は魔力がある者、無い者関係なくみんなに見え認識することが出来た。


「うわ!なんだこの光は!!」


銀の光は触れた者の傷や怪我、体調不良などを回復してくれたが、初めてのことでみんな慌ててパニックが起きていた。

慌てる同僚を見ながら、これはアメリーの魔力だと気づく。

俺は、いつの日かアメリーが『癒しの力』の魔力に目覚めるであろうことを父から聞かされていたから知っていたのだ。


でも、今その力に目覚めたということは・・・殿下の身に何かが起きていることにほかならない。

ぞくりとイヤな汗が流れる。

殿下の身に何かあったら、それはわが国にとっての一大事だ。


煙が少し薄まったので、同僚数名と救護班を伴い穴の中に飛び込む。

アメリーと殿下の魔力を強く感じるほうに向かって進む。

すると殿下の金の光の壁が瓦礫から3人を守るように張られている。

触れるとパンと言う感じに、殿下の魔力が一気に掻き消えるが、その消え方が余計に不安を煽る。


「殿下!アメリー!!」


二人の元に駆けつけたが、その場にいた全員が最悪の結果を予想して言葉を失ってしまう。

目の前の二人は髪の色を赤く染め、血溜まりの中で身を寄せ合うように倒れていたのだから。

自分にとっての身内と身内に近い存在の死を感じた時、人はこんなにも恐怖を感じるものなのだと実感した。

一緒に来ていた救護班が二人の安否を確認する。


「お二人とも息はありますが、意識はありません。怪我は・・・も、ありませんが、あれ?」


アメリーの癒しの力がなんとか間に合ったということか。

ホッとして止まっていた、息をすることがやっと出来たように思う。

最悪な事態は今のところ免れたようだが、流れ出た血の量を見ると、かなり危ない状態には変わりはない。

外に運ぼうとするが、二人の握りあった手を離そうとした時、何かを感じた。

なんでだか手を離してはいけない気がする。


「ノア?どうした」


「いや、何か二人から魔力を感じ、二人の手を離さない方がいいように感じるのですが」


手が止まる俺に周りの者たちも手を止める。

何も感じないが?でもあいつも王族の血を引いてるから何か感じるんじゃないか?など言われる。


「やっぱり離さない方がいい。手はそのまま、そっと地上に運ぶぞ」


この時の俺の判断はあっていたようで、その後陛下に手を離していたらまず二人は助からなかっただろうと言われ、背筋が凍る気持ちがした。

気付けてよかった・・・


その後アメリーと殿下は、王城に運ばれ血みどろの髪や服は王妃様の浄化の魔力できれいにしてもらい、今は一緒にベットに寝かされている。

暫くはお互いの魔力が生命維持装置代わりになるとのことで、一緒に過ごす必要があるのだという。

また出血が酷かったのと魔力量が枯渇してしまい、しばらく目を覚ますことはないだろうと言われた。



あれから二日がたったが、二人はまだ目覚める気配もない。

事後処理などで二日ぶりに見舞いに訪れたが、少し顔の色に赤みを感じるようなってきたが、二人とも人形のようにまだ青白かった。


(ん?!なんか魔力変わってきていないか?)


もともと人の魔力に敏いほうなので今回役に立ってよかったと感じていたが、この二日で二人の魔力が変わってしまったことに驚く。

なんというか、混ざった感じ?!


「あら、ノア君来てくれていたの」


陛下と王妃様、父と母が一緒に室内に入ってきた。

眠る二人の様子を見ながら、王妃様と母はあらあら、まあまあ!と笑顔に対し、陛下と父は苦笑いをしている。


「全く、こいつの執着にも困ったものだ。ただ一人の人として縛り付けるだけでは飽き足らず、魂までも手に入れてしまったんだからな」


「殿下だけの想いではそうはなりません。娘も望んでのことですから仕方がありませんよ。ノア、お前は魔力を感じる能力に優れているから同席を許したが、これから話すことは自分の胸に秘めておいてほしい。お前には二人の魔力はどう感じる?」


「はい、父上。私にはお二人の魔力が混ざって一つの魔力になったように感じるのですが。それでいいのでしょうか?」


流石はノアだなと陛下に称賛され嬉しく思う。


「魔力までもが混ざり合うということは、相手の魂をも共有してしまったということだ」



魂の共有・・・

王家の人は、愛する人への執着が強い。

小さいころからファー様はアメリーへの執着を隠しもせず、外堀から徐々に埋めていき、自分以外を選ばないようにしてきているのを見てきた。

あそこまでただ一人を求めてしまう怖さを感じる反面、ただ一人の人を見つけられたファー様が羨ましかった。

半分王家の血が入っている俺にも、ただ一人の人を求める想いがあるが、まだその人に俺は出会っていない。

でも、今回は魂の共有だという。

魂の共有とはいったい・・・?



「なぁ、ノア。もしもの話だけど、私より先にユーフォニアが逝ってしまったら、私はどうなってしまうと思う?」


陛下の問いに、もし自分だったらと置き換えてみる。

ただ一人の人を失ったら、どうなるか・・・


「俺だったら、狂い死にます」


「そう、私もそう思う。では反対だったら?私が先に逝き、ユーフォニアを残して逝くことになったら?」


「・・・残して逝けないので、連れていきます」


そう、それが魂の共有だよ、と陛下は苦笑いをして話し出す。


「本当に心が狭いと思うし、自分達の執着に嫌になるときはあるけどこうして愛する人と魂の共有が出来ることで、せいので一緒に命の鼓動を止め、来世に行くことが出来る。そして来世でも一緒に過ごせることが約束されるんだ。ほんと来世まで自分に縛り付けようとするなんてすごい執着だよな」


ふふふ、あら私は嬉しいですよと王妃様は笑っていた。

そういう二人の魔力も同じものが溢れていて、もとは別々の力だったものを一つに混ぜ合わせ、魂の共有をして今は同じ物になったのだろう。


「でもファー君ったら早すぎよね。普通は結婚してから行うものなのに、まだ婚約(仮)のうちから縛り付けちゃうんだから・・・我が子ながら重すぎ・・・」


「あら、うちのアメリーはファー様が振り向いてくれる前から、ずっと追いかけていたから、半分王家の血を引く娘の執着も中々なものだったのかもしれませんわよ」


くすくす楽しそうに女性陣は笑い、男性陣はまだ娘を嫁に出した覚えはないんだけどなと苦笑いをしている。

生きていてよかったな、アメリー。

この人たちは、本当にお前たち二人を心配し、生きてくれていることに感謝をしている。

とてもやさしい魔力が二人を包み、穏やかな眠りを守ろうとしてくれている。

こんな力の強い波動、俺は疲れた・・・



それから丸一日立つ頃、やっと二人は目を覚ますが二人でぼそぼそ話をしてすぐにまた眠ってしまった。

ちょうど、二人を見舞いに来ていたウタと扉の外で二人の目覚めの気配に気づいて慌てて中を覗くが、声をかけるのが憚られそっと様子を見ることにした。


「よかった、よかった。お嬢様が目を覚まして」


とマイヤーの腕の中で泣きじゃくるウタに俺も、心の中で泣いて喜んだ。

もう、こんな思いをしたくないからファーレン殿下に負けないくらい強くなろうと心に決める。

完全無欠の王太子に敵うわけないが、少しでも守れる力になりたいと思う。

もう、ファー様とは呼べないなと感じながら。



その後俺は騎士団から近衛騎士団に移動を願い、主君を守るため二人の傍に仕えることになるのはもう少し先のお話だ。

いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマークが少しずつ増え、大変嬉しく思っています。


今回はノア兄さん視点でしたが、難産でした。

途中バックアップを取っていなかった私がいけないのですが、データーが消えてしまいもう一度書き直すハプニングがあり更新が遅くなってしまいすいません。

やっと何とか書き終えることが出来ました。

さて、次回からは主人公二人に起きてもらい、少しずつ動いてもらおうと思っています。


誤字脱字を教えて頂けありがとうございます。

気を付けているつもりですが、教えて頂けると助かります。

今後もよろしくお願いいたします。

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